2019年10月28日、東京・六本木地区をメイン会場に国内最大規模の映画祭第32回東京国際映画祭がスタートした。28日の午後にはグランドハイアット東京にてオープニングセレモニーが開催され、コンペティション部門国際審査委員長のチャン・ツィイーらをはじめ国内外の映画人が開幕を祝った。
開幕を盛り上げたのは、セレモニーに先立って六本木ヒルズアリーナで行われたレッドカーペットだ。国内外の人気俳優、女優、各国の監督・プロデューサーらが華やかな正装、ドレス姿で映画ファンの前に姿を見せて熱狂的な歓迎を受けた。
レッドカーペットの参加ゲストは全部で401名にもなった。フェスティバル・ミューズを務める広瀬アリスを皮切りに、オープニング作品『男はつらいよ お帰り 寅さん』の山田洋次監督と倍賞千恵子、吉岡秀隆、また大林宣彦監督、松本幸四郎、佐藤健といった映画ファンにはお馴染みの顔も多くみられた。
レッドカーペットを見守った観客数は2000名以上、取材マスコミは600人以上。国際映画祭らしい賑わいとなった。
2019年の映画祭では、アニメーション映画も数多く登場する。特別招待作品では、太宰治の名作『人間失格』を原案にポリゴン・ピクチュアズが3D CGのSFアニメーションとした『HUMAN LOST 人間失格』、そして2016年に日本映画界で圧倒的な評価を受けた『この世界の片隅に』の別の側面も描いた『この世界の(さらにいくつもの)片隅に[特別先行版]』が初上映となる。
今年から部門として拡大されたジャパニーズ・アニメーションでは、日本アニメの表現にフォーカスを当てる。日本初の長編カラーアニメーション映画『白蛇伝』から最新の『天気の子』、『海獣の子』まで。また海外映画アニメーションの増加も今年のトピックだ。
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に[特別先行版]』で姿をみせたのは、前作に引き続き主人公・すずの声を演じた女優の のん、片渕須直監督、真木太郎プロデューサーの3人。
純白のシースルーのドレスを着た のんは、一際華やいだ印象を与えた。「わたしの中でとても大事な作品になっています。映画の祭典に呼んでいただけて本当にうれしいです」と語った。片渕監督は「実は映画はまだ完成していません。今晩、これから編集室にいって完成させます」とサプライズな発言で、作品に対する妥協を許さない姿勢を感じさせた。
『HUMAN LOST 人間失格』では、主人公・大庭葉蔵役の宮野真守、ヒロイン・柊美子役の花澤香菜がファンから歓声を浴びた。宮野はダークレッドが基調のシャイニーなスーツ、花澤も真っ赤なドレスと映画のイメージともぴったりだ。木﨑文智監督、ストーリー原案・脚本の冲方丁もビシッっと決めた。
木崎監督は太宰文学をアニメーションに取りあげた理由を「いまの時代は太宰の時代の空気とよく似ている。そこにSFを乗せることで新しいイメージが生み出されるのでないか」と。冲方は「現代に通用するテーマがある。それらの要素をSFとして提示することで、現代の問題を大きく考えられるようにした」と話す。
宮野は「日本の文化のよさをSFのアクション映画で伝えられればいいなと思いました」とアピール。花澤は「透明感や清潔感。いい子だろうという感じを乗せられるように演じました」と役柄について語った。
ジャパニーズ・アニメーション部門では、上映作品の中から『海獣の子供』の制作チームが参加した。プログラミングディレクターの氷川竜介、KADOKAWA代表取締役の井上伸一郎も姿を見せた。
さらにアニメーションと切り離せない存在として上映される『ウルトラQ』から怪獣たちも登場。レッドカーペットで、大人気となった。
海外からはワールド・フォーカス部門の『チェリー・レイン 7 番地』のヨン・ファン監督がこのために来日した。
期間中の映画上映は180本にも及ぶ。このうちアニメーションは20本を超える。幅広い層から映画祭を注目させる点でも活躍しそうだ。
第32回東京国際映画祭
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