2024年5月23日、ソニーグループは都内で「ソニーグループ 経営方針説明会」を開催した。代表執行役会長CEOの吉田憲一郎氏、代表執行役社長COO兼CFOの十時裕樹氏が登壇し、現在、そして今後のソニーグループの経営方針、理念、施策などを語った。
今回のプレゼンテーションでは、引き続きエンタテインメント重視の姿勢が際立った。「クリエテイティブシフト」を経営方針のひとつとし、「音楽」「映画」「ゲーム」「アニメ」などのコンテンツ創出はもちろんだが、プロダクツやサービスでもエンタテインメントを支えるテクノロジーとすることで既存の家電・精密事業会社との差別化、深化を図る。
吉田会長はこれまでのソニーは「感動を届けるものを作ること」が中心だったが、現在は「感動を作ること」を目指すと説明する。それがコンテンツであり、それらを支えるのがソニーのテクノロジーというわけだ。
クリエイティブ創出では、アニメに言及する場面もたびたび見られた。特にアニメのクリエイティブの創出ではソニーミュージックグループのアニプレックスによる高品質な作品制作、グローバルで1300万人超の有料会員を持つクランチロールのアニメ配信プラットフォームを中心としてあげる。
十時社長はクランチロールは映画部門のなかでも成長率が高く、利益率が高いと指摘する。重点的にやりたい分野と強い意欲を示した。
また現在ゲームや映像分野のネットワークで成功を収めている「PlayStation Network」の機能をクランチロールに展開するプランを明らかにした。NetflixやDisney+、maxのような巨大な映像配信プラットフォームを持たないソニーグループだが、PlayStation Networkとクランチロールを融合することで、それに対抗しうるエンタテイメントのグロバールネットワークを築けるとの狙いもありそうだ。
さらに今回の説明会では、クリエイティブの育成を強調する場面がしばしばみられた。アニメ分野は特にトピックスが多い。
ひとつはアニプレックス傘下のふたつの制作スタジオであるA‐1 Pictures、CloverWorks、それにソニーミュージック、ソニーグループが連携してアニメ制作ソフトを開発するというものだ。「AnimeCanvas」と名付けられたもので、詳細は明らかではないが、紹介された映像からはデジタル2Dベースのソフトである可能性が高い。AnimeCanvasの導入で制作環境と効率の改善、作品品質の向上を目指す。
今年度中に試用版を開始する予定だという。さらに外部への提供も視野に入れている。一長一短とされている現在のデジタルアニメーション制作ソフトのなかに、インパクトを与える可能性がある。
さらに今後、アニプレックスとクランチロールを中核に、業界とも連携した海外クリエイターを育成するアカデミーの設立検討を開始した。日本だけでなく、世界から優秀な人材を獲得する狙いがある。
将来的なプランとして説明されたアニメ制作のためのコミュティプラットフォームも実現すればその一翼を担うことになるだろう。このプラットフォームでは、ヴァーチャルリアリティを通じて所在する場所を超えてクリエーションのコラボレーションを可能にする。ソニーグループのテクノロジーが、クリエイティブに結びつくサンプルにもなりそうだ。
こうしたクリエーションにおける試みについてソニーグループは、ディファクトを取りに行こうとするものでない、制作を効率化することによりクリエイティブへ貢献することが目標だとする。全体のパイが大きくなることが重要、クリエイターを支援することが事業につながると強調する。