日本アニメの人気拡大を背景に海外事業の拡大をする東映アニメーションの次の市場は、中東になりそうだ。東映アニメーションとサウジアラビアのコンテンツ企業マンガプロダクションズは、アニメの共同事業を手がける。
その第一弾となる20分のショートアニメ『キコリと宝物』がこのほど完成した。サウジアラビアの民話に基づいたストーリーで、ファミリーや子どもたちに楽しめる内容になっている。アニメは日本で制作された。
中東でも日本アニメは人気が高いとされるが、地域には宗教戒律の厳しい国が少なくない。日本アニメ進出のハードルは高いとされている。日本のアニメの技術を活かしてアラブ・イスラム諸国向けに独自に制作した『キコリと宝物』は、両地域のコンテンツビジネス拡大の突破口のひとつになりそうだ。
『キコリと宝物』にはアラビア語版と日本語版がすでに用意されており、サウジアラビアと日本の両国で放送される。日本でサウジアラビアの文化を紹介する役割も果たす。
さらに今後は、長さ90分の映画、全13話のテレビシリーズの製作も予定する。こちらもサウジアラビアの民話が基になる。
サウジアラビアとのアニメ制作というサプライズな事業には、同国の有力者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子の存在がある。マンガプロダクションズは、皇太子が設立したミスク財団の子会社にあたる。同社はサウジアラビアのコンテンツ産業振興の戦略会社と位置付けられている。今後は、東映アニメーションとだけでなく、各国との企業との事業を拡大して、コンテンツ分野での人材育成、制作、販売、アニメーションやゲームビジネスの展開を目指す。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の父であるサルマン国王は、2017年3月に同国の国王として46年ぶりに来日した。その際に日本とサウジアラビアの両国のもとで、 多分野のMOU(基本合意)が結ばれた。コンテンツ分野ものそのひとつで、東映アニメーションとマンガプロダクションズの取り組みはその一環となる。