電子書籍流通の大手メディアドゥホールディングス(メディアドゥHD)が、次世代型の出版事業に乗り出すことになった。2019年10月16日、ポプラ社の完全子会社である出版社ジャイブの全株式を8月30日付で取得し、完全子会社としたと発表した。さらに9月2日には、そのジャイブに宙出版からネクスト編集部が事業譲渡された。
ジャイブとネクスト編集部から構成される出版事業が、メディアドゥHDの一角を占めることになる。メディアドゥHDは電子書籍流通や書籍・マンガのデジタル関連事業を中核としてきたが、出版事業に自ら乗り出すことになる。
ジャイブは2003年に玩具会社タカラ(現タカラトミー)の系列出版社として設立された。キャラクターコンテンツを中心としたグッズや書籍の制作・販売をする。その後、親会社はポプラ社に変わったが、設立経緯からキャラクターを中心とした書籍やグッズを得意とする。
また宙出版は、1990年に女性向けのマンガに注力した出版社として立ち上がった。マンガ、小説、エッセイなどで人気を博している。ネクスト編集部はウェブマンガの「Next comics」ブランドを展開している。
今回のふたつの事業買収は、メディアドゥHDが日本では新しいかたちの出版形態を実現するための基盤づくりとなるようだ。
メディアドゥHDはジャイブを通じて、海外では「インプリント(imprint)」と呼ばれる事業を導入する。インプリントは、ひとつの企業の中にターゲットや性格の異なった出版ブランドが並立する事業組織を持つ。他社に買収された出版社が、そのままブランドを残して事業を継続する際などに活用される。複数の出版事業の個性や特長を保ちながら、管理システムや流通、バックオフィスを共通化・統合することで効率化、コスト削減も実現する。
ジャイブの代表取締役社長には新たにメディアドゥHD取締役副社長COO/メディアドゥ代表取締役社長の新名新氏、メディアドゥHD出身の片山誠氏が取締役に就任する。また前宙出版・専務取締役の中江陽奈氏が執行役員となり、新レーベル「ネクストF」事業を担当する。
今回はジャイブと宙出版ネクスト編集部のふたつのブランドが統合したかたちだが、メディアドゥHDがインプリントを掲げる点から、今後も機会があれば、他社レーベルの受け入れを摸索することはありそうだ。