文化庁は2017年9月25日に、平成29年度文化庁映画賞を決定した。文化記録映画部門の3作品と映画功労部門の12名が発表された。
このうち功労部門の受賞者には、アニメーション撮影の高橋宏固氏、アニメーション編集の古川 雅士氏の名前も挙がった。10月25日に東京六本木のグランドハイアット東京にて贈呈式が開催され、賞状と賞金が手渡される。
文化庁映画賞は、日本の映画芸術の向上と発展を目的に,2003年にスタートした。国内に映画賞は数多くがあるが、文化庁が主催をすること、映画賞の作品対象が文化記録映画(ドキュメンタリー)に特化していることで異色の存在だ。
2017年の文化記録映画大賞はテレビ長崎の『五島のトラさん』が、優秀賞は『人生フルーツ』(東海テレビ放送)と『まなぶ通信制中学60年の空白を越えて』(グループ現代)の2作品が選ばれた。
映画功労部門も、映画祭やアワードで脚光の浴びることの多い監督や役者だけでなく、幅広いジャンルを対象、長年業界に貢献した人物を顕彰している。2017年も、特殊造形美術・操演、特殊メイク・特殊造形、照明、録音、タイミング、テクニカルコーディネーター、さらには実験映画や映画学・美学まで様々な仕事をしてきた人物が並んだ。
アニメーションから功労者が選ばれるようになったのは、2010年からである。監督、美術、アニメーター、製作、評論まで、こちらも幅広い。
アニメーション撮影の受賞者は2015年の白井久男氏に続き2人目、アニメーション編集も前年の森田清次氏に次ぎ2人目だ。アニメーション制作のポストプロダクションの仕事に大きなスポットを当てている。
高橋宏固氏は、1962年に東映動画(現東映アニメーション)に入社したのが、キャリアのスタートだった。その後は虫プロダクションを経て,さらに自らアニメーション撮影スタジオの高橋プロダクションを設立した。
代表作には映画『エースをねらえ!』、『ルパン三世カリオストロの城』、『天空の城ラピュタ』などがある。撮影における画面作りと独自のテクニックに定評があり、アニメーションの撮影技術の向上に尽くしてきた。
古川雅士氏は、虫プロダクションでテレビアニメ『鉄腕アトム』で編集を担当。テレビアニメの草創期からアニメの編集に関わってきた。映画『千夜一夜物語』、『銀河鉄道の夜』、『あらしのよるに』といった傑作映画を代表作とする。
また長年にわたり日本映画・テレビ編集協会の理事を務め、業界の発展にも貢献してきた。
平成29年度文化庁映画賞 映画功労部門 受賞者
浅沼圭司 (映画学・美学)
上松盛明 (特殊造形美術・操演技師)
江川悦子 (特殊メイク・特殊造形)
かわなかのぶひろ (実験映画)
鈴木美康 (タイミング)
高橋宏固 (アニメーション撮影監督)
田辺信道 (映画録音)
中本哲 (和楽監修)
根岸誠 (テクニカルコーディネーター)
古川雅士 (アニメーション編集)
森村幸子 (スクリプター)
矢部一男 (映画照明)