2020年3月7日、文化庁メディア芸術祭実行委員会は、第23回文化庁メディア芸術祭の受賞作品、功労賞受賞を発表した。文化庁メディア芸術祭は、それまで公の支援が手薄であったメディアアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門の優れた作品の顕彰を目的1997年にスタートした。今回で23回目を迎える。
本年度はフェスティバルのさらなる発展を目指して、大きな改革がされている。これまで各部門は大賞、優秀賞、新人賞の3賞で構成していたが、これにソーシャル・インパクト賞とU-18賞を加え5賞構成に変更した。ソーシャル・インパクト賞は社会的な影響力を発揮した作品を選び、U-18賞は18歳以下の制作者を対象とする。ただし本年U-18賞の受賞者は、エンターテインメント部門のみから選ばれた。
アニメーション部門の大賞は、渡辺歩監督のもとスタジオ4℃がアニメーション制作した劇場映画『海獣の子供』が選ばれた。手描きアニメの伝統と最新のCG技術を融合させた圧倒的な映像表現が話題となった作品だ。すでに受賞している第74回毎日映画コンクールでもアニメーション映画賞に続く栄冠になる。
優秀賞は4作品。短編アニメが3作品で日本から『ある日本の絵描き少年』(川尻将由)、『ごん』(八代 健志)、フランスから『Nettle Head』(Paul E. CABON)である。残りはフランスの劇場映画『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』(レミ・シャイエ)、2019年に日本公開もされた話題作でもある。ジャンルを横断することが特長のメディア芸術らしいラインナップである。
新人賞は全て短編で、『向かうねずみ』(築地のはら・日本)、『浴場の象』(CHENG Jialin・中国)、『Daughter』(Daria KASHCHEEVA・ロシア)、国籍も多彩だ。
新設のソーシャル・インパクト賞は、新海誠監督の『天気の子』である。2019年国内最大ヒット映画との背景が反映された。U-18賞はアニメーション部門からは選ばれなかった。
アート部門の大賞は、米国在住のアダムW. ブラウンの『[ir]reverent: Miracles on Demand』だった。肉眼では見えない微生物と人間の歴史と信念体系の関係を反映させたインスタレーションである。
エンターテインメント部門では、日本オリンピックミュージアムに設置したウェルカムビジョンの映像作品『Shadows as Athletes』を大賞とした。佐藤雅彦、佐藤匡、石川将也、貝塚智子らが、制作した。
マンガ部門は島田虎之介の『ロボ・サピエンス前史』となった。受賞9作品のうち8作品が日本からと、国内勢が強いのが特徴になっている。
また功労賞4人のひとりにアニメーション関係者として、プロデューサー、アニメーション史家のなみき たかしを顕彰する。
今年のアニメーション部門の応募総数は、劇場長編、テレビ、ネット配信が合計101作品に、短編が442作品の合計543作品であった。前年比で2割以上の増加と、制作者からのメディア芸術祭に対する関心がより高まったかたちだ。
しかしメディア芸術祭全体では、前年の4384作品より3566作品と2割近い落ち込みとなった。アート部門、エンターテイメント部門、マンガ部門、いずれも落ち込みが厳しい。近年はメディア芸術祭の開催時期、応募時期、開催会場がたびたび変更されており、応募者がスケジュール等の詳細を把握しにくくなっている可能性もありそうだ。
第23回文化庁メディア芸術祭
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