2017年9月25日から10月1日まで、デンマークの地方都市で開催された第5回ヴィボー・アニメーション映画祭にて日本特集が組まれたことが現地で話題呼んだ。これまで北欧で開催された日本のアニメ・マンガのイベントとしては過去最大規模となり、映画上映のほかトーク、展覧会など多彩な企画が実施された。これらは日本とデンマークの外交樹立150周年を記念したものとなっている。
しかし、アニメーションを通じた両国の交流は、これだけにとどまらない。映画祭に先立って始まったワークショップ「NipponNordic – Universe Accelerator(ニッポンノルディック – ユニバース・アクセラレータ)」もそのひとつだ。
「NipponNordic」はヴィボー市に若手と中堅のクリエイターが3週間滞在し、同市のアニメーションワークショップでオリジナルのコンテンツ企画開発を目指すものだ。日本とデンマークの応募者の中から選抜された15組が参加した。
期間中は専門家からの講義や指導を経て、ゼロから企画を生みだす。さらに設定やコンセプトアート、ビジネスプランニングまで持っていく実践型のボリュームのある内容となっている。
映画祭の開催中、9月29日にはその成果が日本とヨーロッパのエンタテイメント企業のプロの前で披露された。また、特に優れたプロジェクトとして、4つのアワードが与えられた。
成果発表は、それぞれ15分程度。わずかな時間でコンセプトからターゲット、そして期間中に仕上げた設定やビジュアル、パイロットなどがピッチにて披露される。既にかなりのキャリアを積んだ参加者が多かったこともあり、完成度はかなり高かった。作品をイメージさせる映像やビジュアルが豊富なのも驚きであった。
英語でのプレゼンテーションとなったが、日本からの参加者も含めていずれも手際よく、自身の企画を効果的にアピールする姿も印象に残った。ヴィボー市にかなり優れたクリエイターが多く集まったことを示すのに十分だ。
ただ完成度の高さの一方で、斬新と思わせるには力不足な企画が少なくなかった。それはプロジェクトが、商業化が出来ることを前提としたことにあるかもしれない。ビジネス展開を考えれば、ターゲットを設定し、そこにいるオーディエンス受け入れられる必要がある。
モバイルなどのゲーム化を企画に取り込んだものが多かったのも、大き過ぎない予算でビジネス展開を考えた時の解決策というわけだ。
ヨーロッパの参加者からはテレビシリーズを前提にした企画が目立った。それらはハイコンセプトでアート性も高いのだが、日本の視点からでは商業性が弱く、ビジネス展開にやや難があるように感じる。しかし、結果として4つのアワードは全てヨーロッパ勢が持っていった。放送局がアニメーション制作を支える文化が依然残るヨーロッパと日本の違いが横たわっているのかもしれない。
日本の参加者企画は、ターゲットの設定やコンセプトはうまくまとまっているが、市場の広がりに欠けるとの印象を受けた。手堅くビジネス化が可能と思わせる一方で、より大きな可能性を排除してしまっているのでないかと。
ここで開発されたアイディアの全てが今後商業化されることは、もちろん現実的にはないだろう。しかし、かたちを変えながら将来につながるに違いない。
そして何よりも、短期間で集中してアイディアを練る、異なるカルチャーとコミュニケーションを図る、そしてそこでグローバルなネットワークを築く、これらは参加者の資産になったはずだ。そして参加者の今後の活躍が、アニメーションやコンテンツ文化の発展にも寄与するに違いない。
「NipponNordic – Universe Accelerator(ニッポンノルディック – ユニバース・アクセラレータ)」
https://www.nippon-nordic.com/