東京証券取引所(東証)は、アジアの成長企業の東証上場を後押しする「東証 アジア スタートアップ ハブ」を開始する。アジア地域の有力企業が日本で上場することで、各社が資金調達やビジネスを拡大できることを目指す。
東証のグロース市場は新興企業市場としては、アジアで群を抜いた流通量を誇っている。これを成長するアジア企業に活用してもらう狙いだ。さらに外国企業の上場が増えることで、東証の国際化、金融市場としての地位向上も念頭に置く。サポートプログラムでは、東証のほか証券会社、銀行、法律事務所やベンチャーキャピタルなど幅広い企業や組織がバックアップする。
プロジェクト開始にあたり、このほど特に力をいれてサポートする14社の支援対象企業が選定された。シンガポールから6社、台湾4社、マレーシア、ベトナム、インドネシア、韓国が各1社。AIやデータ解析、ヘルスなどの今後、大きな成長を狙える分野から幅広い企業が並ぶ。
このなかにはエンタテインメント分野の企業も含まれている。ひとつはベトナムから1社だけ選ばれたPOPS Worldwide、また韓国からはデジタルコミック・小説配信のRidi Corporationがあがっている。
POPS Worldwideは、2008年の設立以来、自社アプリやTikTok、YouTubeなどを通じて音楽やテレビドラマ、アニメなどを配信している。配信番組には『ONE PIECE』や『名探偵コナン』、『ドラえもん』、『ポケットモンスター』といった日本の人気アニメも数多い。
サービスの利用者はベトナムだけに留まらず、東南アジアに広く及び、8億人を超えるとしている。アジアエンタテインメント分野の巨人だ。2022年11月には、テレビ東京から300万ドルの出資も受けており、すでに日本の企業とのビジネスも関係が深い。東京市場で上場されれば、大きな注目を浴びるだろう。
Ridi Corporationは、「RIDI」や「Manta」といったアプリを通じて韓国から電子コミックやウェブ小説などを配信している。過去3年間でグローバルのアプリのダウンロード数は1100万以上、2022年の売上高は2億ドルを超えた。成長著しい韓国のデジタルコミック分野の有力企業である。
デジタルコミックは、近年、日本と韓国での国境を越えたビジネスでの連携が増えている。こちらは資金調達に加えて、日本での認知度向上によるビジネス拡大も期待出来る。
日本語での書類提出などのハードルもあり、東証は外国企業の上場が少ない。時価総額や流通金額の大きさに較べて国際金融市場とは言い難い状況である。
一方で、日本とビジネス的に関わりが深く、東証と親和性の高いアジア企業は少なくない。地理的に近い、アジアへ投資を考える日本在住者も多いはずだ。マンガやアニメーションなどのエンタテイメント分野は、そのひとつである。「東証 アジア スタートアップ ハブ」がうまく進めば、アジアのエンタメ企業の東証上場が増えるかもしれない。