2019年3月1日、第22回文化庁メディア芸術祭の各部門の受賞作品が発表された。アート部門大賞は古舘健氏の「Pulses/Grains/Phase/Moiré」、エンターテインメント部門大賞は「チコちゃんに叱られる!」、マンガ部門は韓国出身のBoichi氏「ORIGIN〈オリジン〉」。そしてアニメーション部門は、Boris LABBÉ氏の短編アニメーション「La Chute」である。
文化庁メディア芸術祭は、新しい分野の芸術の優れた成果を紹介し、振興することを目指して1997年にスタートした。“メディア芸術”という言葉を括りに、メディアアート、アニメーション、マンガ、ゲーム、映像、ウェブなど広い分野を網羅しているのが特長だ。とりわけアニメーションやマンガ、ウェブコンテンツなどの社会認知度の向上に大きな役割を果たしてきた。
また近年の特長は海外からの認知度の高まりである。今回は世界101ヵ国・地域から2453作品の応募があった。これは全体の半分以上57%を占める。
これに伴い、近年は海外からの受賞も増えている。アニメーション部門大賞のBoris LABBÉ氏は、フランスから応募だった。またマンガ部門のBoichi氏は、韓国出身で日本のマンガ雑誌「ヤングマガジン」で活躍する。
受賞作品の国際化は、とりわけアニメーション部門に色濃くでている。大賞のほか優秀賞にはフランスのセバスチャン・ローデンバック氏の長編映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』が、新人賞にはイランのAmir Houshang MOEIN氏の『Am I a Wolf?』、ロシアのAnastasia MAKHLINA氏の『The Little Ship』が選ばれている。受賞8作品のうち半分を占める。
これまでも長編、短編、テレビシリーズを並列的に評価することからメディア芸術祭のアニメーション部門は、受賞のハードルがかなり高かった。これに海外作品が加わることで、大賞はもちろん、優秀賞、新人賞を手にするのも大激戦となっている。
そうしたなかで日本からの受賞は、優秀賞3作品、新人賞が1作品である。優秀賞は夏の劇場公開で高い評価を受けた『ペンギン・ハイウェイ』(石田祐康監督)、『若おかみは小学生!』(高坂希太郎監督)、そして樋口真嗣監督のテレビシリーズ『ひそねとまそたん』。
新人賞は山下明彦監督の『透明人間』。『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』のタイトルで劇場上映されたオムニバスの一本である。山下監督は『ハウルの動く城』や『ゲド戦記』、『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』で活躍したベテランアニメーターだが、今回監督ということで53歳での新人賞となった。
アニメーション分野では、このほか功労賞として池田宏氏が選ばれた。池田氏は東映動画出身で、『空飛ぶゆうれい船』、『魔法使いサリー』などで演出・監督・脚本で活躍した。後に任天堂の情報開発部長としてゲームソフトの開発に従事。さらに2000年代以降は、アニメーション教育に大きな業績を残した。
このほか各部門の大賞、優秀賞、新人賞、そして審査委員会推薦作品は、文化庁メディア芸術祭の公式サイトで確認できる。
また受賞作品を紹介する「受賞作品展」が2019年6月1日から 6月16日まで、東京・お台場の日本科学未来館をメイン会場に開催される。今回も作品展示に加えて、上映会、トークイベント、ワークショップ、シンポジウムなどが実施される。
2019年はこの「受賞作品展」が大きく変わる。まず期間が2018年の12日間から、一挙に16日間に拡大する。短期間に多くのイベントが詰っているとして、期間延長を望む声が大きかっただけに、これに応えたかたちだ。
一方で会場は2018年の国立新美術館、17年の新宿・NTT インターコミュニケーション・センター、16年の20周年企画展の秋葉原・アーツ千代田 3331と定まらない。特に今回の日本科学未来館は都心からアクセスが決していいとは言えない。これまでと同様に多くの人に関心を持ってもらうことが出来るのか、告知も含めて大きな課題となりそうだ。
文化庁メディア芸術祭 http://j-mediaarts.jp/