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アニマックスとキッズステーション、ソニー・ピクチャーズがノジマに売却
- 2023/12/20
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■国内2大アニメチャンネルがノジマへ
ソニー・ピクチャーズ ジャパン(SPEJ)が、傘下の2つのアニメ専門チャンネル「アニマックス」と「キッズステーション」を家電量販店チェーンのノジマに売却する。2023年12月19日、両社が発表した。
アニマックスとキッズステーションは、国内アニメ専門の2大チャンネル。それぞれ契約世帯数は約730万と約700万、合計で1430万となっている。また現在、SPEJはアニマックスの66%、キッズステーションの67%と過半数の株式を保有している。この全てをノジマの関連会社に譲渡する。
譲渡の仕組みはやや複雑だ。事業譲渡に先立って、SPEJはまず新会社AKメディアを設立する。このAKメディアにアニマックスとキッズステーションの全株式と従業員を承継させる。そのうえで新会社の株式をノジマの孫会社であるAKエンタテインメントが買収する。AKエンタテインメントはノジマの子会社でミステリーチャンネルやアクションチャンネルを運営するAXNの完全子会社として2023年10月24日に新設された。
全ての取引は4月1日に完了する。譲渡価額は現在調整中で決定次第、発表する。
■東映アニメ、TMS、バンダイナムコ、ADKも株式売却
アニマックスは1998年にSPEJのほか、東映アニメーション、トムス・エンタテインメント、サンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)、旭通(現ADKマーケティング・ソリューションズ)の共同事業として設立された。アニメ業界の有力各社から供給される人気番組のラインナップが強みで、国内を代表するアニメ専門チャンネルとして長年愛されてきた。
今回の売却でSPEJは、アニマックスの他の株主4社の保有する全株を一旦引き取る。新会社はアニマックスの全株式を保有することになる。4社も今回の取引でアニマックスの経営から離れることになる。
キッズステーションはこれとは別の歴史を持つ。設立はアニマックスより5年早い1993年で大倉商事の放送事業としてスタートした。1998年に経営権は三井物産に移った。視聴世帯数は長らくアニマックスを上回り、両社は長年ライバル関係にあった。CS放送事業の環境の厳しさ増す中で、2017年にアニマックスと経営統合し生き残りを目指した。株主にはSPEJのほかTBSホールディングス、JCOM、ホリプロがあるが、今回、こちらの異動はない。経営主体は大倉商事から三井物産、SPEJ、そして今回ノジマに移ることになる。
■ノジマAXNは5局体制に
アニメ放送事業から遠い印象の強いノジマだが、ノジマはすでに2021年に同じSPEJからAXN、AXNミステリーの2つのチャンネル事業を買収している。さらに2022年には洋画専門チャンネルのザ・シネマも加えて、子会社AXNが運営する。今回アニメ放送事業を獲得で、5つのチャンネルを保有することになる。ノジマは今回の株式取得により、既存の3チャンネルとのシナジーを期待するとしている。
またAXNには執行役員会長として、ソニー・ピクチャーズの元代表取締役の滝山正夫氏がいる。滝山氏は、アニマックス立ち上げの際に大きな役割を果たしたことで知られる。長年アニマックスの代表取締役も務め、アニメはよく熟知したビジネスでもある。インターネット配信が広がるなかで、今後、番組編成型の専門チャンネルがどうビジネス展開をしていくか注目されるところだ。
■ソニーグループ、アニメ放送はCATV・衛星からネット配信にシフト
一方で両チャンネルを手放すソニーグループは、近年、アニメビジネスに積極展開しているから、業界で存在感のあった「アニマックス」と「キッズステーション」を手放すのはやや驚きだ。しかし、ソニー・ピクチャーズの世界ビジネスを見れば、有線・衛星専門チャンネルは縮小傾向が続いている。特に日本アニメを中心とした「アニマックス」ブランドは業態転換や売却が相次いでいた。2020年には東南アジアのアニマックス、韓国の「Sony One」などを売却している。日本のアニマックスは、現在まで残る数少ない放送局になっていた。
グローバルで見れば有料会員だけで現在世界に1200万人以上いるアニメ専門のクランチロールを2021年に買収したことが大きい。国ごとに作業が異なり手間のかかるCATV・衛星放送よりも、インターネット配信にアニメ放送事業の主力を置きたいと考えていいだろう。
日本国内ではアニマックスは、同じソニーグループでソニー・ミュージック子会社のアニプレックスとアニメ事業で競合するとの課題があった。アニプレックスは2010年代以降に事業が急拡大しており、アニマックスと事業規模で大きく差がついている。ソニーグループ全体では、国内のアニメ事業はアニプレックス、海外はクロンチロールでそれぞれ一本化するとの流れになりそうだ。