一般社団法人日本動画協会は2020年8月12日に、協会公式サイトにて「TVアニメシリーズ制作における制作進行のマニュアル」を公開した。A4サイズで52ページとかなりボリュームのあるテキストだが、誰でも無料でダウンロード出来る。
本書はアニメーション制作現場の管理を担う「制作進行」と呼ばれる仕事の内容について広くまとめたものだ。若手制作進行だけでなく、アニメ業界を目指す若い学生にも向けても仕事の実際を紹介する。
アニメーション制作は、数あるエンタテイメントのなかでも特に多くのスタッフがひとつの作品に関わる。テレビアニメ1シリーズ、映画1本で数百人規模のスタッフが参加することは珍しくない。人数が多いのは絵を描くアニメーターで、さらに背景美術や演出、音響や編集などのポストプロダクションなど様々な職種で構成される。
そのなかでアニメーション制作のスケジュール、進行、予算、調整などの管理部門を担うのが「制作進行」である。アニメーターなどに較べると世間的には認知度は低いが、アニメ業界の若いスタッフの最初のキャリアになることも多く、制作進行からプロデューサーや演出なども目指す。
重要な役職である一方で仕事が多方面にわたり、就業環境は長年厳しいとされてきた。キャリアの初期段階でアニメ業界から離れるケースも少なくない。多忙な中で若手教育が不充分で、仕事のノウハウがあまり共有化されないことも理由のひとつとみられている。
そこで今回、制作進行業務をマニュアル化することで、仕事の理解と教育の向上を狙う。新人やアニメ業界を目指す若者の仕事の理解と改善の一助にする人材育成の一環とした。
テキストはアニメーション制作会社トリガーの取締役の舛本和也氏が執筆した「アニメーション制作における制作進行の座学本」のデータを活用している。舛本氏も制作進行を経てプロデューサーを長く務めている。自身の経験から教育教材として、「座学本」を作成してきた。さらに日本動画協会の人材育成委員会での標準化内容の検討を加えて、今回のマニュアルとなった。
かなり実践的な内容だが、それだけに「制作進行」のリアルを知るのには最適だ。制作進行や目指す人だけでなく、アニメーション制作の現場の現状を理解したい人にとってもかなり役に立ちそうだ。
「TVアニメシリーズ制作における制作進行のマニュアル」
発行: 一般社団法人日本動画協会 人材育成委員会
一般社団法人日本動画協会 https://aja.gr.jp