輪郭線の強弱も、ポリゴン・ピクチュアズ独自開発ソフトでセルルックCGの表現向上

PPixel(ピクセル)

 CGを使いながら手描きアニメの魅力も引き出すセルルックのデジタルアニメーション。その技術開発と表現力の向上がますます進んでいる。発展の鍵を握るのは、制作に用いるソフトウェアの進化だ。
 大手CGスタジオのポリゴン・ピクチュアズは自社でレンダリングソフトウェア「PPixel(ピクセル)」を開発、2022年4月からの放送開始するテレビアニメシリーズ『エスタブライフ グレイトエスケープ』で全面導入したことを明らかにした。自社開発ソフトで独自性のあるルックやスタイル表現を実現する。

 PPixelはレンダリングと呼ばれる作業のソフトウェアで、セルルックCGや、つややかさを押さえることでキャラクターなどの映像の魅力を増すNPR(ノンフォトリアリスティックレンダリング)表現に特化している。
 開発にあたっては、ポリゴン・ピクチュアズが多くのアニメ、CG作品を制作するなかで培ったアイデアやノウハウを組み込んだ。独自性の高い映像表現と既存の制作パイプラインシステムの融合、さらに処理の高速化、レンダリング時間の短縮などの効率化を実現する。
 
 4月からの『エスタブライフ グレイトエスケープ』では、全てのキャラクター、さらにCG背景にもPPixelを用いている。
 なかでも注目されるのは、強弱のつけた描画の実現である。これまでのCGソフトウェアではキャラクターを形作るラインは、単一な太さでしか描けなった。PPixelでは手描きのように強弱をつけた線でのキャラクターが可能になる。例えば耳のような複雑な形状も表現できる。
 アニメの絵では前髪が透けて眉が見えるといった独特の表現があるが、従来のCGではこれも描くのが難しい。しかしPPixelは、これらをまとまった一つのレイヤーとすることで作業を効率化する。ハイクオリティな映像をCGアニメ高い生産性で制作する。

 ポリゴン・ピクチュアズは、1983年7月の設立。デジタルアニメーションスタジオとしては世界有数の歴史を誇り、この分野で国内最大手となる。東京のほかマレーシアにも制作拠点を持ち、国内外の話題作を作ってきた。代表作には『シドニアの騎士』、『亜人』、『BLAME!』『スターウォーズ レジスタンス』などがある。
 スタジオの強さの秘密は、新しい表現や技術への挑戦だ。自社開発のPPixelもその成果のひとつである。ポリゴン・ピクチュアズは今後も、必要なソフトウェアを部分的に自社開発することで独自のCG表現の進化と制作の効率化を目指す構えだ。

関連記事

アーカイブ

カテゴリー

ピックアップ記事

  1. AnimeJapan2024
    ■凝った企業ブースが脱コロナ禍を演出  2024年3月23日から26日まで、東京都内で日本アニ…
  2. 第2回国際アニメーション映画祭
     新潟国際アニメーション映画祭が、2024年3月15日から20日までの6日間、新潟市内各所の会場で開…
  3. クランチロールアワード
     日本アニメ配信プラットフォームで世界最大規模のクランチロールが主催する「クランチロール・アニメアワ…
ページ上部へ戻る