ポップカルチャーが映し出す「MANGA 都市 TOKYO」、国立新美術館でスタート

「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」

 日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮を題材にした企画展「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」が東京・六本木の国立新美術館で8月12日よりスタートする。当初は6月24日の開幕を予定していたが新型コロナ感染症拡大対応として自粛・延期、感染症対策をとることで今回の開催に結びついた。
 もともと2018年にフランス・パリで開催され好評を博した「MANGA⇔TOKYO」を、凱旋企画として再構成したものである。マンガ・アニメ・ゲーム・特撮を切り口に巨大都市・東京の姿を描き出す意欲的な試みが注目されていただけに、待望のスタートだ。

 展覧会会場でまず目に入るのは、中央に設けられた巨大な東京の模型である。湾岸から下町、新宿・池袋などの都心、さらに郊外の住宅地までを含む東京23区が1/1000で再現されている。模型の背面には大型スクリーンが設置され、東京の地図と連動するかたちでアニメ作品が次々に映し出される。大掛かりな装置にびっくりさせられるが、現実の都市と仮想の物語が共鳴する状況を直観的に受け取れる。
 この模型の周囲をぐるっと囲むかたちで、テーマごと区切られた展示空間が設けられている。「東京の日常」から「破壊と復興の反復」、「キャラクターvs都市」といった具合だ。
 フロアプランだけを見た時には、中央のスペースに対して展示空間が狭いかなと思えた。しかし実際はその逆だった。ざっと見るだけでも軽く1時間はかかる物量と内容なのだ。何しろ展示総数は500点以上、要するに東京の模型がそれだけ大きいのだ。

 展示作品はカルチャー好きにはお馴染みのタイトルばかりだ。スタートのテーマは「破壊と復興」で「ゴジラ」シリーズから『AKIRA』、『エヴァンゲリオン』、そこから江戸の大火事を描いた『火要鎮』や『帝都物語』、『人狼』、『千年女優』と掴みはばっちりだ。
 日常パートに進むと『あしたのジョー』や『美少女戦士セーラームーン』、『君の名は。』、『シティハンター』…。さらに「キャラクターvs.都市」では「ガンダム」シリーズ、『ラブライブ!』、「初音ミク」などが並ぶ。懐かしさを感じると同時に、各作品が時代や舞台となった空間に密接に結びついていることに気づかされる。

 この時代を横断し、作品と舞台を結びつけることに今回の企画のうまさがある。本企画は「2020年の視点でポップカルチャーの全体像を見通す」と、非常に意欲的な試みである。しかし同じポップカルチャーとはいえ4分野はそれぞれ異なる特徴があり、歴史を持つ。そのまま並列的に扱えば総覧的、悪くするとバラバラで統一性がなくなりかねない。
 それを今回は「東京」とのテーマを与えることで、これらが有機的につながる。マンガの隣にアニメが、その隣にゲームが、そこに特撮が現れても違和感はない。同時にこれらの作品群が虚構世界でありながら、現実を強く反映し、むしろリアルを浮かび上がってくる。
 まさに本展覧会は、マンガ・アニメ・ゲーム・特撮を通じて「東京」の意味を知る場となる。ポップカルチャーのファンにはうれしい空間であると同時に、「東京」に関わりを持つ全ての人にアピールする展示として仕上がっている。

「MANGA都市TOKYO
ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」

https://manga-toshi-tokyo.jp/
2020年8月12日〜11月3日
会場:国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)

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