米玩具大手ハズブロ TV番組制作エンタテイメント・ワン買収 映像事業強化

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 米国の玩具大手ハズブロが映像事業拡大に向けて、大胆な戦略に打ってでた。2019年8月22日、カナダの大手番組制作会社エンタテイメント・ワン(Entertainment One)の買収を発表した。約40億ドル(約4200億円)で発行済みの全株式を買い取る。ハズブロがこれまで手がけた買収で過去最大規模になる。
 買収によりハズブロは、エンタテイメント・ワンの持つ番組制作能力とキャラクターブランド、テレビ番組・映画を獲得する。エンタテイメント・ワンは『ペッパピッグ』や『しゅつどう!パジャマスク』といった人気作品を保有している。ハズブロはこうしたブランドを活性化し、将来的な利益拡大を目指すとしている。

 エンタテイメント・ワンは1970年創立のカナダの映画・テレビ番組・音楽の企画・制作・配給会社。2018年で約1200億円の売上がある。幅広い番組制作を手がけるが、なかでもキッズ向けのアニメーションを得意とする。
 『ペッパピッグ』は子豚の女の子が主人公のキャラクター作品。日本でも放送され、玩具展開もした。『しゅつどう!パジャマスク』は夜になるとヒーローとして活躍する3人の小学生たちが主人公の話。ディズニー系のチャンネルで、こちらも日本で放送されている。
 ハズブロは男児向けやゲームが強く未就学児のマーケットが弱かった。人気ブランドは一朝一夕には築けないから、それを一挙に手に入れるのは価値がある。

 ハズブロは1923年創立で、マテルと並ぶ北米の二大玩具会社として圧倒的な力を持つ。長年マテルの後塵を拝してきたが、近年では投資家の評価はむしろハズブロのほうが高い。
 2018年のハズブロは年間売上高約4億5000万ドル(約5300億円)に対して時価総額が約131億ドル(約1兆4000億円)、マテルも売上高は約4億5000万ドルだが時価総額は約31億ドル(約3150億円)と大きく差をつけられている。マテルが赤字決算である一方で、ハズブロが約2億2000万ドル(約230億円)の黒字であることが理由だ。加えてオーソドックスな玩具ビジネスが中心のマテルに対して、周辺ビジネスを積極的に進める点で評価されている。
 ハズブロは2018年にはサバン・ブランズからパワーレンジャーを中心に5億2200万ドルでライセンス事業を買収している。玩具そのものでなく、玩具を支えるキャラクター、そしてキャラクターの認知度とブランドを広げる映像番組に力を置き、キャラクター事業を拡大する方向性が見て取れる。

 しかし一方で懸念もある。ハズブロにとって過去最大になった今回の買収価格は、過去30日間のロンドン市場の株式取引価格に31%のプレミアを乗せている。
 エンタテイメント・ワンの前年の売上高は1200億円程度、利益は15億円ほどだ。エンタテイメント・ワンを買収しても売上高は2割程度しか増加しないが、4500億円の買収金額はハズブロの年間売上高に匹敵する。さらにエンタテイメント・ワンの一株当たりPERは200倍を超え、かなり割高にも見える。今後投資に見合うリターンを、エンタテイメント・ワンと共に築けるかが問われることになる。

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