日本から生まれた大型キャラクターブランドが、海外で巨額で取引されることになった。2018年5月1日、米国の大手玩具メーカーのハズブロが、サバングループより「パワーレンジャー」を中心としたキャラクター事業を5億2200万ドル(約570億円)で買収すると発表した。
ハズブロが手にするのは、サバン・プロパティが保有する「パワーレンジャー」の他、My Pet Monster、 Popples、Julius Jr.、Luna Petunia、Treehouse Detectivesといったキャラクターブランドの事業になる。しかし、ハズブロの発表が「パワーレンジャー」とその他のブランドとなっているように、事業の資産価値の大半が「パワーレンジャー」と見ていいだろう。キッズ向けのスーパーヒーローに破格の値段がついた。
ハズブロは買収総額5億2200万ドルのうち、2億5200万ドルを現金で、残り2億7000万ドルは自社株で支払う。サバングループを経営するハイム・サバン氏は、ブランド価値をさらに引き上げるため引き続きビジネスに助言をする。
「パワーレンジャー」シリーズは、日本の特撮ヒーロー番組であるスーパー戦隊シリーズがオリジナルになっている。この海外販売権を日本から購入したサバン氏が、米国向けに独自のアレンジを加えて『パワーレンジャー』としたことで大ヒットとなった。
1993年にスタートしたシリーズは根強い人気を持ち続け、2017年にはライオンズゲート配給のSF大作にもなっている。誰でもよく知るアイコンである。
今回の買収のきっけは今年2月、ハズブロがサバンより「パワーレンジャー」の玩具分野のマスターライセンスを2225万ドルで獲得すると決めたことだ。その直後に、キャラクターの可能性を充分引き出すには完全買収がよいと方向転換。わずか2ヵ月後の映像、ゲーム、デジタルコンテンツを含む全ての権利の獲得につながった。
「パワーレンジャー」の玩具のマスターライセンスはこれまでは日本のバンダイナムコグループが保有していたが、2019年春からはライバルのハズブロから商品が発売される。バンダイは長年持っていた「パワーレンジャー」の玩具における主導権を失う。バンダイナムコグループは2018年3月期で「パワーレンジャー」関連で110億円の売上げを見込んでいる。
ハズブロは米国だけでなく、世界でもマテルに次ぐ規模を誇る第2位の巨大玩具メーカーである。近年は好業績が続き、その勢いはマテルを凌ぐほどだ。
主力商品には、「マイリトルポニー」「モノポリー」などがある。なかでも強さを発揮しているのが「トランスフォーマー」「マジック:ザ・ギャザリング」「NERF」などの男児向けのブランドである。「パワーレンジャー」は、そうしたラインナップを一段と強化することになる。新たな人気ブランドの開発・育成には時間と資金、それに幸運も必要だが、ハズブロは巨額の資金でこれを可能にしたわけだ。
ハイム・サバン氏にとっては、「パワーレンジャー」の売却はこれで2度目になる。もともと自身が育て上げたキャラクターは、2001年に自社が保有する放送局FOXファミリーと共にウォルト・ディズニーに売却しているからだ。その後、新たに設立した会社により2010年に買戻し、ブランドの再構築をしていた。
今回は「パワーレンジャー」と共に他のキャラクターブランドも売却することで、この分野からほぼ撤退することになる。90年代から企業買収と売却で資産を拡大してきたことで知られるサバン氏は、再び「パワーレンジャー」で大きな資産を築いたことになる。