日本映画製作者連盟は2019年8月26日、新海誠監督の『天気の子』を第92回米国アカデミー賞国際長編映画賞の出品作品に決定した。国際映画賞(International Feature Film.)は、米国以外で公開された映画を対象とする部門だ。これまで外国語賞(Foreign Language Film)と呼ばれていたが、今年から「外国」という概念が時代遅れになったことを理由に名称を変更している。
エントリーは各国1作品の制限があり、主催者の米国映画芸術科学アカデミーの依頼により日本映画製作者連盟が決定している。外部委員による選考会で応募作品の中から選び出す。
日本からのエントリーにアニメーションが選ばれるのは、1998年宮崎駿監督の『もののけ姫』以来20年ぶりとなった。1995年の高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』と今回の『天気の子』を含めても3作品のみ。『もののけ姫』と『平成狸合戦ぽんぽこ』はいずれもノミネートに進めなかっただけに、『天気の子』に期待がかかる。
国際映画賞は米国アカデミー賞のなかでも、特別な位置づけになっている。エントリー条件は米国以外で製作された英語以外の作品としている。しかし多くの部門が条件にする米国公開は必要ない。一方で国際映画賞のエントリーでは、作品賞ほかのエントリー対象にはならない。
アニメーション映画やドキュメンタリー映画も選考対象としているが、アニメーションでのノミネートはハードルが高い。これまで2008年のイスラエル『戦場でワルツを』以外でのノミネートは例がなく、受賞作品はない。
そして受賞までには長い道のりがある。各国から集められた作品は、まず10作品のショートリストに絞り込まれる。7作品を国際映画委員会の投票で選出、3作品を国際映画賞エグゼクティブ委員会が投票で決定する。ショートリストの作成は、本選考の負担を軽くする目的がある。
その後10作品を鑑賞した国際映画委員会のメンバーの投票によりノミネート5作品を決定、2020年1月13日に発表する。さらに全ノミネート作品を鑑賞したアカデミー協会の会員により受賞を決定、2月9日の授賞式での発表となる。
『天気の子』は、長編アニメーション賞での行方も気になるところ。こちらは別にエントリーが必要で、2019年12月31日までにロサンゼルス地区での1週間以上の興行が必須となる。
これについては『天気の子』の北米配給権を獲得するGIKDSは年内にロサンゼルスで先行公開、年明けに全国公開を目指すとしている。アカデミー賞のエントリーを意識したスケジューリングだ。全国公開前のエントリーは、賞レースでは認知度が充分でないためハンディが大きくなりがちで難しい選択である。一方で一年後では遅く過ぎるとの判断もあったと考えられる。
ロサンゼルスの先行公開や試写会を通じて、積極的に業界関係者の映画鑑賞を促す戦略をとることになりそうだ。そうしたなかで国際映画賞の日本代表となったことは大きな支援だ。業界関係者の試写や先行上映での鑑賞を促す原動力になるに違いない。
『天気の子』の米国で賞レースの行方に俄然目を離せなくなってきた。米国アカデミー賞のノミネート発表は2020年1月13日。2020年2月9日にカリフォルニア州ハリウッドのドルビーシアターで授賞式を開催し、この場で各受賞者・受賞作品が発表される。授賞式の様子は米国国内ではABCが生中継し、世界200ヵ国以上でも放送される。