岩井澤健治監督の新作長編アニメ企画、カンヌ映画祭でパイロット上映

ひな

 2019年に映画『音楽』で国内外のアニメーション関係者を驚愕させた岩井澤健治監督の新たな長編企画が動き始めている。企画実現に向けたパイロット・フィルムが完成し、今年5月のカンヌ国際映画祭でプレゼンテーションされることになった。
 映画のタイトルは『ひな』(英題:Hina is beautiful)。マンガ家・新井英樹の作品を原作に、伊豆を舞台に、男たちを惑わすひなという女性と彼女を争う男たちが描かれる。3分間のパイロット・フィルムはカンヌ国際映画祭「アヌシー・アニメーションショーケース」で紹介される。
 パイロット制作のスタッフが豪華だ。脚本に『ドライブ・マイ・カー』 などの大江崇允、アニメーション作画監督とキャラクター・デザインは『映像研には手を出すな!』や『うる星やつら』の浅野直之が参加する。作品のプロデュースはABCアニメーションが行う。

 岩井澤健治は7年半かけて作画4万枚で完成させた『音楽』で一躍名を挙げた。独特の間合いと絶妙な音楽の合わせかたが魅力で、世界各地の映画祭で上映され絶賛を受けた。その中にはオタワ国際アニメーション映画祭長編コンペティション部門グランプリやアヌシー国際アニメーション映画祭最優秀オリジナル音楽賞などが含まれる。そうした評価の高さが今回、企画段階から世界を視野にいれる理由とみられる。
 今回パイロットが上映される「アヌシー・アニメーションショーケース」は、世界的に知られたアヌシー国際アニメーション映画祭が、世界中から優れたアニメーション企画を集めたなからセレクトしたものだ。映画企画の実現、それに向けた製作パートナーのマッチングのきっかけとなることを意図している。

 『ひな』の企画も現在は、企画・提案の段階だ。今後はパートナーを募り、製作資金を集める。最終的には80分から90分程度の長編アニメーションを目指す。
 プロデュースのABCアニメーションは関西を拠点とする朝日放送のグループ会社である。長年アニメビジネスに関わってきたが、近年は新分野への進出に意欲的だ。今回は新たな長編アニメーション映画で、これまでにない分野、そして海外視野の製作と新たな挑戦となる。日本のアニメビジネスの新しい動きとしても注目される。

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