高知アニメクリエイターアワード「鯨を夢む」がグランプリ 京都精華大が席巻

高知アニメクリエイターアワード2025

 若手クリエイターのアニメーションコンテスト「高知アニメクリエイターアワード2025」の各賞が、2025年4月5日、高知県立県民体育館で開催された「高知アニクリ祭2025」にて発表された。グランプリには、Shuzukuさんの『鯨を夢む』が決定した。
 Shuzukuさんは京都精華大学マンガ学部アニメーションコースの卒業生で、本作は卒業制作作品として制作した8分あまりの手描きのアニメーションだ。

 高知アニメクリエイターアワードは、地元金融機関の高知信用金庫が創業100周年記念事業として進める地域のアニメ振興プロジェクト「高知アニメクリエイター聖地プロジェクト」の一環である。次世代のクリエイター支援を目的としており、総額3000万円の賞金が受賞クリエイターやクリエイターの所属する教育機関に贈られる。
 00年代などに比べると若手クリエイターのネット以外で発表の場やアワード・コンテストが少なくなっていることもあり、高知アニメクリエイターアワードは早くも大きな関心を浴びている。今年度の応募総数は昨年を大きく上回る293作品。また審査員や関係者からは、応募作品の質が昨年より大きくあがっているとの指摘が相次いだ。今回はノミネートを30作品として、うち15作品が何らかの賞を獲得した。

 グランプリの『鯨を夢む』は荒廃した世界でひとり旅を続ける少女を描き出す。短いなかに感情を揺るがすドラマを込めて、観る人を惹きつける。
 今回、アワードで注目されたのが京都精華大学の活躍だ。京都精華大学からのグランプリは前年の『REDMAN』 (キムソンジェ)に続いて2年連続になる。さらに今年はふたつある準グランプリ受賞作品のひとつがやはり同大学マンガ学部アニメーションコース/ランデブー班の『ジョセリン・ラン・デブ』。さらにアニ魂賞、オーディエンス賞、審査員特別賞で合計6作品が受賞作となった。
 こうした結果は、大学側のコンテスト応募への積極的な働きかけのほか、高知アニメクリエイターアワードの目指す作品との親和性の高さもありそうだ。京都精華大学の受賞作品は、『鯨を夢む』以外は複数のクリエイターによる共同制作によるものだ。他の受賞作品でもチームやユニットでの制作が目立った。
 ひろしまや新千歳などの国際アニメーション映画祭では、個人作家の作品が多くコンペティションにあがってくるのとは対照的である。共同作業の多いアニメスタジオと近しい作品が多く応募され、評価されているとみられる。高知ならではの特徴として、これからも独自の存在感を発揮しそうだ。

 高知はクリエイターアワード以外でも、アニメーション分野で存在感を増している。2022年1月にスタートした「高知アニメクリエイター聖地プロジェクト」は今年で4年目。すでに高知初のアニメスタジオの誘致にも成功し、アニメ産業ハブの建築構想も進むなど、地方発のアニメ振興の成功モデルとして注目を浴びている。
 クリエイターアワードの発表の場となった高知アニクリ祭2025は、今年で2年目。4月5日と6日の二日間、高知市の高知県立県民体育館をメイン会場に開催された。
 期間中は企業や作品の出展ブースや子どもたちのアニメ制作体験、ステージイベントなど多彩な企画が、若いアニメファンや親子連れに好評を博していた。今年はメイン会場を昨年よりもアクセスのよい県民体育館に移したこともあり、来場者数も大きく伸びた。
 期間中の人出は県民体育館、帯屋町会場、おまち多目的広場、キネマMなどを合算して2万4300人、昨年の1万6700人から45.5%もの増加だった。イベントは早くも地元に根づきつつあると言ってよさそうだ。

高知アニクリ祭 https://www.combank.co.jp/KochiAnikuri/
高知アニメクリエイターアワード https://www.anikuri.jp/

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