5月16日に2019年3月期決算を明らかにした日テレホールディングスは、これに合わせて大きな発表を相次いで行った。
まずは代表取締役社長の交代である。現代表取締役社長の大久保好男氏が現代表取締役会長に異動、取締役副社長の小杉善信氏が現代表取締役社長に昇格する。小杉氏は大学卒業後に日本テレビに入社、営業局長や編成局長などを経て現職にあった。
また同日「日本テレビグループ 中期経営計画2019-2021 日テレ eVOLUTION」を発表している。同社が中期経営計画を発表するのは2016年以来、3年振りとなる。
新しい中期経営計画では、テーマとして「テレビを超えろ」を掲げる。制作力を活かすことで、テレビだけにとどまらない「総合コンテンツ企業」を目指す。
中期経営計画では各事業別として「放送事業」「インターネット事業」「コンテツ事業」「新規事業開発」の4分野をあげた。
このうちコンテツ事業で筆頭に挙げられたのが、アニメである。「マルチ展開可能な大型アニメコンテンツの開発」としている。合わせて、アニメ・映画事業での既存ビジネススキームの抜本的見直しと知的財産権ビジネスの積極推進も計画では言及されている。これまでのテレビ放送から映像ソフト発売するアニメや、劇場公開からテレビ放送・映像ソフトに展開する映画とは異なった仕組みを目指しているともいられる。
IPビジネスを拡大できるオリジナル作品、海外市場が狙えるドラマ、映画・イベント・商品化・ゲームと一体開発できる作品といった目標もある。しかし作品のジャンルや方向性には触れていない。今後、どんなアニメや映画がどんなかたちで出て来るのかで判断することになりそうだ。
一方2019年3月期通期決算は、小幅な動きだった。連結売上高は4249億4500万円(0.3%増)、営業利益は497億4900万円(2.4%減)、経常利益は573億9800万円(6.3%減)、当期純利益は387億3900万円(3.5%増)である。
近年地上波放送局の役割が問われているが、安定した業績である。新中期経営計画で「テレビを超えろ」としたが、動画配信プラットフォームHuluの運営やアニメ製作、スポーツクラブ、テーマパークと幅広い事業に乗り出しており、すでにそうした動きは始まっているといえる。
アニメ関係では、アニメ製作子会社のタツノコプロが19億9500万円の売上高。前年比29.7%減であるが、営業利益と経常利益は各1億1800万円といずれも80%前後増と高い伸びとなった。当期純利益も8400万円の黒字と堅調であった。
アンパンマンミュージアムを運営するACMも順調だ。売上高は37億2200万円(1.9%増)だが、営業利益3億5800万円(61.7%増)、経常利益3億9300万円(62.0%増)、当期純利益は2億7200万円(72.0%増)。2019年夏には横浜の施設の移転拡張も予定しており、今期も成長が続きそうだ。
アニメのDVDやBlu-rayも発売する映像音楽ソフトのバップは赤字から抜け出さない。売上高は124億6900万円(10.3%減)、そして営業損失8億7200万円、経常損失6億8800万円、当期純損失7億4800万円。
一方、映像配信プラットフォームHuluを運営するHJホールディングスは、有料会員数が202万人と初めて200万人の大台を超えた。売上高も前年比14.1%増の205億6300万円と200億円を超えた。利益は依然赤字だが、赤字幅は急激に縮小している。映像損失は4億1100万円、経常損失が3億7200万円、当期純損失が9億9400万円だ。今後はいよいよ黒字化を視野に入れることになる。