経済産業省の公表する平成29年度の予算案によれば、同省は平成29年度経済産業省関連事業として、「コンテンツ産業新展開強化」に6億円、また「先進コンテンツ技術による地域活性化促進」に1億円を計上している。いずれも商務情報政策局文化情報関連産業課(メディアコンテツ課)による事業となっている。
ふたつは新年度からの新規事業としているが、「コンテンツ産業新展開強化」は今年度までの「コンテンツ産業強化対策支援」、「先進コンテンツ技術による地域活性化促進」は「地域発コンテンツの広域発信支援」を新たな枠組みで引き継ぐものとみられる。しかし、「コンテンツ産業強化対策支援」が前年度予算が6億9000万円、今年度が6億5000万円に対し6億円、「先進コンテンツ技術による地域活性化促進」も今年度の1億5000万円に対し1億円と、いずれも予算は削減だ。
こうしたなかでコンテンツ産業に関わるこれら事業の内容や成果目標も変化が見られる。今年度まではコンテンツ産業の国内外売上高20兆円を掲げていたが、次年度は平成37年度までに文化GDPを約18兆円としている。18兆円はGDP比の3%程度に相当する。
また従来は国際見本市の開催を事業の一番に挙げていたが、次年度は「国際連携強化・海外発信」を最初に挙げる。市場調査・各国との対話を通じてコンテンツビジネスのスキームを検討するものだ。またコンテンツ関連の祭典の集約化に言及しており、予算の削減も合せて、秋に開催される東京国際映画祭などのコ・フェスタ事業への影響もありそうだ。
二つめに「国際人材育成・技術発掘」、三つめが「国際見本市等を通じた海外展開基盤整備」だ。3つの事業イメージはこれまでと同じだが、人材や技術といった次世代への投資をより重視する方向性も窺える。またコンテンツ関連のイベントでビジネスマッチング(BtoB)の場をも提供する。
今年度から盛り込まれた新たな視点では、ファイナンス分野が注目される。関連資料では「国際ビジネスを前提とした資⾦調達を実現すべく、新たな契約・資金調達方法に関する仕組みを整備・検証する。」と説明している。
コンテンツファイナンスは2000年代初めから中頃まで積極的に検討され、実際に試みられた。しかし、2000年代後半以降からこうした動きは停滞している。例えば映画・アニメでは産業を巡る環境は大きく変わっているにも関わらず、依然、従来型の製作委員会方式が多く活用されている。経済産業省の新たな関心は、こうした時代の潮目を感じ取っているとも見える。
一方、「先進コンテンツ技術による地域活性化促進」も、新しい潮流を取り込んだものである。VRやAR、AI、ドローン空撮といったコンテンツと結びついた新たな先進技術と地域プロモーションを連動させた事業である。コンテンツ制作企業と地域の観光・スポーツ分野の事業者がコンソーシアムを形成する際に、支援を行う。