■業績上振れで、通期業績予想も上方修正
映画事業最大手の東宝が、コロナ禍後の映画復活を背景に業績を大きく回復させている。2023年10月11日に発表された東宝の2024年2月期第2四半期の決算は、連結売上高、営業収入とも二桁の伸びを確保した。邦画・洋画・アニメのいずれの分野でも大きなヒットがあった。
連結売上高は1396億4200万円(16%増)、営業利益は307億5200万円(18.4%増)、経常利益は328億8100万円(8.8%増)、当期純利益は217億5100万円(0.9%増)。映画事業のほか、演劇事業も二桁の増収増益、不動産事業はほぼ前期並みだった。
第2四半期までの業績を受け、東宝は通期業績予想の連結売上高を2600億円から2700億円に引き上げた。また営業利益は450億円から500億円に、経常利益は480億円から540億円に、当期純利益は310億円から360億円にそれぞれ予想を修正した。
■上半期で興収100億円超が2本、宮崎駿新作も80億円超え
映画事業全体では売上高は948億7200万円(21.3%増)、営業利益は228億3100万円である。映画事業は、映画製作・配給などの「映画営業」と劇場上映をする「映画興行」、さらにアニメや出版・商品、スタジオ運営の「映像事業」に分かれている。
映画営業では上半期で、東宝配給で『名探偵コナン 黒鉄の魚影』が138億円超え、宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』が期間中の興行収入が83.1億円になる大ヒットなった。また劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』、『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』、『キングダム運命の炎』、『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』、『怪物』などのヒット作がある。東宝東和配給でも『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が140億円近く、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』が53.7億円と大きなヒットがある。営業事業の売上は244億7400万円(22.6%増)、営業利益は96億1000万円(23.9%増)。
映画興行は売上げ445億1600万円(16%増)、営業利益は81億1400万円(52.2%増)だった。自社配給作が好調だったほか、2023年6月1日からの鑑賞料金値上げも業績に貢献した。
■アニメ事業牽引は海外、配信 作品は「ヒロアカ」「呪術」「SPY×FAMILY」
映像事業のなかでは、アニメ事業の急伸が堅調だ。売上高は147億5300万円と前年同期比で43.5%増の高い伸びとなっている。とりわけ海外事業が好調で、前年同期比85.8%増の50億4200万円だった。この結果、国内外の売上比率は海外が34.2%で、全体の1/3を超えた。
アニメ事業のなかでも配信部門が大きく伸びており、売上高は53億9200万円で75.5%増となった。新シーズンのリリースが始まった『呪術廻戦』と『僕のヒーローアカデミア』が牽引した。両作品はキャラクターライセンス部門でも貢献し、同部門の売上高は34億3200万円で16.5%増の伸びである。
このほか商品部門が10億6900万円(14%増)、パッケージ部門8億7500万円(47.6%増)、劇場公開部門20億6200万円(3.7%増)、配分金その他部門(17.3%増)。またミュージカル「SPY×FAMILY」の帝国劇場での上演により、今期からあらたに演劇公演部門(10億5400万円)が計上されている。
アニメ事業の主要な出資作品は、『僕のヒーローアカデミア』、『呪術廻戦』、『SPY×FAMILY』、『BLUE GIANT』、『ハイキュー!!』、『Dr.STONE』、『ちびゴジラ』などがあった。下半期は、テレビシリーズでは『葬送のフリーレン』、『SPY×FAMILY Season2』、劇場映画では『SPY×FAMILY CODE: White』に期待がかかる。
アニメ事業単独の営業利益は公開されていない。ただし映像事業全体では売上高258億8000万円(30.4%増)、営業利益を51億600万円(22.9%増)としている。売上の半分以上を占めるアニメが利益面でも大半を占めているとみていいだろう。