香港でブランド管理ビジネスを展開する承興国際(Camsing International Holding)が、米国のエンタテイメント会社Pow!エンタテインメント(Pow! Entertainment)を買収した。2017年5月8日に、承興国際より発表された。取得価格は非公表。
Pow! エンタテインメントは、スパイダーマンやアイアンマン、X‐メンなどを生み出したアメコミ界の巨匠スタン・リーが設立したことで知られている。CEOを務めるスタン・リーは、いまでもPow!を拠点に創作活動と、ビジネスを行っている。
承興国際はPow!が保有数する映画、テレビ番組、ゲーム、アニメーション、コミックなどの権利を獲得する。ただし、買収後もスタン・リーはCEOに留まるとしており、経営や創作に対する影響は少なそうだ。
承興国際は1996年に香港に設立された。クリエイティブとIP(知的財産)の活用を掲げ、幅広いブランドビジネスを得意とする。香港のほかシンガポールや中国・北京、広州などの中華圏にネットワークを持つ。
ブランドはペプシコ、P&G、NOKIA、NBA、VISAなどグローバル企業、中国石油や中国太平洋保険、中国建設銀行など中国本土の企業とも密接だ。近年は映画やアニメーションにも積極的で、『カンフー・パンダ』、『トランスフォーマー』、『羊のショーン』などを取り扱う。今回は他社からのライセンスを獲得するのでなく、コンテンツを保有するPow!を丸ごと買収したのが特長だ。今後、獲得したIPをどのように活用するのか、とりわけ中華圏でのビジネスが注目される。承興国際はPow!と共に、新しいビジネスを築きたいと意欲的だ。
スタン・リーは、1930年代終りに米国のコミック業界に入り、1960年代にマーベルコミックで『アイアンマン』、『スパイダーマン』、『X-メン』、『アベンジャーズ』などの大ヒット作の原作を務めた。Pow! エンタテインメントは、自身の会社として2001年に立ち上げた。
『アイアンマン』、『スパイダーマン』などの権利はマーベルが保有するため、Pow!が持つのは2001年以降にスタン・リーが開発したタイトルになる。国内外の放送局やスタジオと共同開発した作品が多く、『Stripperella』やリアリティ番組『Who Wants to Be a Superhero?』などがある。
日本企業との共同プロジェクトもある。アニメスタジオのボンズと手を組んだテレビアニメ『HEROMAN』、集英社と手を組んだマンガ『Ultimo』、2017年7月からNHKで放送が決まった長濵博史監督、スタジオDEENがアニメーション制作の『ザ・リフレクション』もそのひとつだ。Pow! が所有するこうした作品の権利も、承興国際の傘下に入ることになる。
アメコミ界を代表する人物の企業が中華資本に買収されるのは驚きだが、スタン・リーは今年94歳。いまでも元気に活躍するが会社の将来については、考えなければいけない時期だ。そこにエンタテインメントやIPで海外進出を強める中国語圏の企業が結びついたと言えそうだ。