日本映画製作者連盟(映連)は、2021年1月27日に「2020年全国映画概況」を発表した。毎年1月末で前年の映画興行をとりまとめ、記者会見で発表するものだが、今年は新型コロナ感染症拡大の影響を受けてリリースでの告知となった。
公表された数字も、新型コロナ感染症からの影響が甚大だ。2020年の映画館入場人員は1億613万7000人と前年(2019年)の45.5%減。興行収入も1432億8500万円(45.1%減)と、いずれもほぼ半減した。
期間中に休止や時間短縮、座席の制限など興行縮小をした影響が大きかった。また新作映画の公開延期も響いている。2020年の公開本数は1017本と前年より20%減、邦画506本(前年689本)、洋画511本(前年589本)。
減少数では邦画が多かったが、洋画はハリウッド大作の大幅延期が相次ぎ、むしろ興行では打撃が大きかった。洋画のみの興行収入は340億円と71.4%の大幅減である。邦画は前年比23.1%減の1092億7600万円にとどまった。全体に占める邦画比率は、19年の54.4%からいっきに76.3%に跳ね上がった。
洋画で興行収入10億円を超えた作品は、4本のみである。2019年公開の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の73億2000万円、新型コロナが広がる前からの『パラサイト 半地下の家族』(47.4億円)、『キャッツ』(13.5億円)。このなかで9月公開の『TENET テネット』(27.3億円)の健闘ぶりが際立つ。
邦画1092億7600万円も、20年の年間興行1位になった劇場アニメ『「鬼滅の刃」無限列車編』の好調によるところが大きい。本作は10月の公開以来、記録的なヒットを続けており、21年1月現在で365億5000万円と映画興行史上最高と記録を塗り替え続けている。『鬼滅の刃』だけで2020年の映画興行のおよそ1/4を稼ぎだした計算だ。
『鬼滅の刃』の好調もあり、全体に占めるアニメ映画の割合も高まっている。2020年の邦画アニメの興行収入は500億円を超え、年間興行収入全体の1/3を占めることになる。
興行収入10億円を超えたのは7本、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』、『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(33.5億円)、『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(21.3億円)、『劇場版 Fate/stay night [Heaven’s Feel] III. spring song』(19.5億円)、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』(17.9億円)、『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』(11.3億円)、『ルパン三世 THE FIRST』(11.6億円)だ。
それでも『名探偵コナン 緋色の弾丸』や『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が21年に公開延期し、『映画ドラえもん』や『映画クレヨンしんちゃん』は前年より興行数字を落とすなど困難が多かった。2021年も数多くの劇場アニメ公開が予定されており、新型コロナを乗り越えた後の興行に期待をかけることになりそうだ。
【2020年 映画興行概要】
□入場人員: 1億613万7千人 (前年対比54.5%)
□興行収入: 1432億8500万円 (54.9%)
邦画 1092億7600万円 (76.3%)
洋画 340億900万円 (23.7%)
□公開本数: 1017本 (邦画506本、洋画 511本)
【2020年 興行収入10億円以上作品(邦画)】
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』 365.5億円 (東宝/アニプレックス)
『今日から俺は!!劇場版』 53.7億円 (東宝)
『コンフィデンスマンJP プリンセス編』 38.4億円 (東宝)
『映画ドラえもん のび太の新恐竜』 33.5億円 (東宝)
『事故物件 恐い間取り』 23.4億円 (松竹)
『糸』 22.7億円 (東宝)
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』 21.3億円 (松竹)
『カイジ ファイナルゲーム』 20.6億円 (東宝)
『劇場版 Fate/stay night [Heaven’s Feel] III. spring song』 19.5億円 (アニプレックス)
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』 17.9億円 (東宝)
『男はつらいよ お帰り 寅さん』 14.7億円 (松竹)
『犬鳴村』 14.1億円 (東映)
『ヲタクに恋は難しい』 13.4億円 (東宝)
『罪の声』 12.2億円 (東宝)
『浅田家!』 12.1億円 (東宝)
『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』 11.9億円 (東宝)
『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』 11.8億円 (東宝)
『午前0時、キスしに来てよ』 11.7億円 (松竹)
『ルパン三世 THE FIRST』 11.6億円 (東宝)
『屍人荘の殺人』 10.9億円 (東宝)
『AI崩壊』 10.0億円 (ワーナー ブラザーズ)
【2020年 興行収入10億円以上作品(洋画)】
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』 73.2億円 (ウォルト・ディズニー)
『パラサイト 半地下の家族』 47.4億円 (ビターズ・エンド)
『TENET テネット』27.3億円 (ワーナー ブラザーズ)
『キャッツ』 13.5億円 (東宝東和)