「シン・ゴジラ」が文化庁メディア芸術祭大賞、実写長編映画で初 アニメーション部門は「君の名は。」

文化庁メディア芸術祭大賞

 2017年3月16日、第20回を迎えた文化庁メディア芸術祭の受賞作品が発表された。アート部門、エンターテイメント部門、アニメーション部門、マンガ部門の4分野と功労賞からなり、4分野から大賞、優秀賞、新人賞がそれぞれ選ばれるアワードだ。
 アニメーション部門では新海誠監督の『君の名は。』が、エンターテイメント部門では庵野秀明総監督/樋口真嗣監督の『シン・ゴジラ』が大賞となった。2016年の話題の映画が、メディア芸術祭を賑わせた。マンガ部門の大賞は『BLUE GIANT』(石塚真一)、アート部門はドイツからの応募作品『Interface I』が輝いた。

 アニメーション部門では過去3年間海外作品の大賞が続いており、国内から選ばれたのは4年ぶりとなる。また長編劇場映画の受賞は2009年(第13回)の『サマーウォーズ』(細田守)以来、実に7年ぶり。『君の名は。』は、それだけインパクトの大きな作品だったと言える。新海誠監督は2002年(第6回)のメディア芸術祭にて、『ほしのこえ』で特別賞を受賞している。14年ぶりに、今度は大賞で戻ってきたことになる。
 全4作品ある同部門優秀賞のひとつである映画『聲の形』の山田尚子監督も、2度目の受賞だ。2年前に『たまこラブストーリー』で新人賞に輝いたばかり。今度は優秀賞で期待に応える。
 優秀賞では、もう1本長編映画がある。ブラジルから応募された『父を探しては』(Ale ABREU)は日本でも公開をされた話題作である。

 残り2つの優秀賞、新人賞3作品は、いずれも短編作品となった。応募作品は、劇場映画、テレビシリーズ、OVAを全て合わせて69本、これに対して短編は559本にもなる。さらに短編は海外からの応募も多く、これが近年の受賞作に海外の短編が増えている理由でもある。長編やTV作品に較べても競争は激しい。この中から優秀賞となったのは、『A LOve Story』(Anushka Kishani NAANAYAKKARA)、『Among the black waves『』(Anna BUDANOVA)だ。
 また新人賞は全て短編で、『ムーム』(堤大介/ロバート・コンドウ)、『I Have Draemed Of You So Much』(Emma VAKARELOVA)、『Rebellious』(Arturo ‶Vonno” AMBRIZ / Roy AMBRIZ)となった。『ムーム』は米国で活動する堤大介と米国人のロバート・コンドウが、日本のスタジオで制作したボーダレスな作品となっている。

 今回も傑出した作品が集まったが、一番の話題はエンターテイメント部門大賞の『シン・ゴジラ』だろう。様々な分野のメディア芸術の集まる文化庁メディア芸術祭だが、これまで実写長編映画からの受賞はなかった。
 もともとアワードの主旨が、20年前には陽の当たる場が少なかったメディア芸術を顕彰することで、文化の向上と発展を目指すものだったからだ。当時から多くのアワードが用意されていた映画は、受賞部門が用意されていない。
 それが今回、4分野のなかで一番定義の広いエンターテイメント部門に、まさにゴジラが侵略してきたかたちだ。エンターテイメント部門の審査員である東泉一郎は、受賞作品の説明の際に、実際にこの応募にどう対応するのか相当悩んだという。結果として、従来からあるゲーム、ウェブ、ガジェット、MV・CMを退けての大賞受賞とサプライズな結果になった。『シン・ゴジラ』が映画である以前に、メディア表現として新しく、そして優れていることを評価した。

 第20回の応募は4部門合せて4034作品、うち半分以上は海外からで、応募地域は過去最高の87ヵ国地域に達した。これに連れて、とりわけアート部門とアニメーション部門では受賞作の国際化が進んでいる。文化庁メディア芸術祭は、日本だけでなく、海外の最新の状況を確認する場にもなってきた。
 今回の成果は今年9月に東京・初台のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で開催される受賞作品展で一望できる。これまでは毎年2月開催であったが、今回より秋開催に移動する。今回は2015年9月10日から2016年9月9日までの作品を対象としているため、展覧会までに、やや期間が空くかたちになる。

第20回文化庁メディア芸術祭
http://festival.j-mediaarts.jp/

アニメーション部門受賞作品・受賞者

■ 大賞
『君の名は。』 新海誠 (日本)
■ 優秀賞
映画『聲の形』 山田尚子 (日本)
『父を探して』 Alê ABREU (ブラジル)
『A Love Story』 Anushka Kishani NAANAYAKKARA (英国)
『Among the black waves』 Anna BUDANOVA (ロシア)
■ 新人賞
『ムーム』 堤大介/ロバート・コンドウ (日本/米国)
『I Have Dreamed Of You So Much』 Emma VAKARELOVA  (ブルガリア)
『Rebellious』 Arturo ‶Vonno” AMBRIZ / Roy AMBRIZ (メキシコ)

■ 審査委員会推薦作品
『愛のかかと』 円香 (日本)
『終物語』 西尾維新 (日本)
『風の又三郎』 山田裕城 (日本)
『劇場版響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』 石原立也 (日本)
『甲鉄城のカバネリ』 荒木哲郎 (日本)
『サティの「パラード」』 山村浩二 (日本)
『青春おじいさん』 土屋萌児 (日本)
『ちえりとチェリー』 中村誠 (日本)
『眠れない夜の』 八代健志 (日本)
『僕だけがいない街』 伊藤智彦 (日本)
『みつあみの神様』 板津匡覧 (日本)
『モブサイコ100』 立川譲 (日本)
『Decorado』 Alberto VAZQUEZ (スペイン)
『FEED』 岡崎恵理 (日本)
『For you』 SHI Yajun (中国)
『Ghost Cell』 Antoine DELACHARLERY (フランス)
『In Other Words』 Tal KANTOR (イスラエル)
『Jungle Taxi』 キム・ハケン (韓国)
『Kukuschka』 Dina VELIKOVSKAYA (ロシア)
『Light Sight』 Seyed M. TABATABAEI (イラン)
『L’OEil du Cyclone』 平岡政展 (日本)
『oldman youngman』 加賀遼也 (日本)
『Peripheria』 David COQUARD-DASSAULT (フランス)
『Slowly Rising』 稲葉秀樹 (日本)
『Somalia94 – The Ilaria Alpi affair』 Marco GIOLO (イタリア)
『THE EMPTY』 JEONG Dahee (韓国)
『The Unnatural』 Marcos SANCHEZ (チリ)
『Ticking Away』 Michael SEWNARAIN (オランダ)
『Ughh ugh』 SHI Yajun / Uma SHARMA (中国/インド)
『Waiting For the New Year』 Vladimir LESCHIOV (ラトビア/リトアニア)
『Way of Giants Alois DI LEO』 (ペルー/イタリア)

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