全国出版協会と出版科学研究所は2020年1月24日に、2019年の国内出版市場規模を発表した。紙出版と電子(デジタル)出版を合算した市場は1兆5432億円となった。伸び率は前年比0.2%増ではあるが、両団体がデジタル出版の市場統計を始めた2014年以降で、出版市場全体で初めて成長に転じた。
成長を牽引したのは、デジタルである。デジタル市場が高い伸びを見せて、紙出版の減少を補った。デジタルの市場比率は19.9%と、前年の16.1%から3.8ポイント上昇している。またデジタルのなかでは、コミック(マンガ)の急成長が際立った。
書籍と雑誌を合計した紙市場全体の推定販売金額は1兆2360億円、前年比4.3%減であった。15年連続の減少で下方トレンドに歯止めはかかっていない。
減少率がより大きかったのは雑誌で4.9%減の5637億円。それでも雑誌に分類されるマンガ単行本がアニメ化された『鬼滅の刃』のヒットなどで4%増に転じて、前年の9.3%減より下げ幅を縮小している。一方週刊誌は8.1%、ムック本は8%減と厳しい数字だ。
書籍の金額は6723億円で3.8%減とこちらも縮小している。文庫本が厳しく、文芸、生活実用書、学習参考書も低調だったとしている。児童書は健闘した。
デジタル市場は全体で3072億円と初めて3000億円を超えた。伸び率は23.9%増にもなった。デジタル市場の成長はマンガに支えられている。デジタル市場の84%以上2593億円が、マンガの販売額にあたる。
他のデジタル書籍は349億円(8.7%増)、デジタル雑誌は130億円(16.7%減)となっている。デジタル雑誌の減少はシェアの高い定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員数の減少が続いているためだ。
デジタルマンガの伸び率は29.5%増で、一年間で市場が3割増えた計算だ。2018年4月に海賊版サイトの大手「漫画村」が閉鎖された後に、市場の拡大幅が大きくなった。また積極的なプロモーションが、新たな読者の獲得つながっているという。
全国出版協会・出版科学研究所の算出するデジタルの市場規模は、ユーザー課金をベースに算出している。無料閲覧が出来るマンガプラットフォームなどの広告金額は含まれない。インプレス総合研究所による別調査では、2018年にはデジタルマンガだけで167億円の市場があったとされている。これを加算すれば、デジタルの市場はさらに大きなものとなる。