米国「コミックの殿堂」ノミネートに、萩尾望都と中沢啓治

アワード/コンテスト

 サンディエゴ・コミコンで知られる米国のコミコン・インターナショナル(Comic-Con International)は2020年1月25日に、今年の「コミックの殿堂(The Will Eisner Comic Awards Hall of Fame)」入りの2名と、業界関係者の投票により選出する候補者のリストを発表した。
 受賞が決まったのは、新聞連載の女性パイオニアであるネル・ブリンクリーとアフリカ系作家の先駆者であるE・シムズ・キャンベルのふたりだ。ブリンクリーは1900年代から30年年代に活躍し、若い女性たちを魅力的に描くことに人気を集めた。キャンベルは30年代から60年に「Esquire」や「The New Yorker」「Playboy」などの雑誌を活動の場とした。

 投票部門の2020年候補者は全14人で、日本からも萩尾望都と中沢啓治の二人のマンガ作家の名前が挙がった。二人以外には、日系米国人で『兎用心棒』の代表作があるスタン・サカイらの著名な作家が並ぶ。
 萩尾望都は1949年生まれ。女性のストーリーマンガのパイオニアで竹宮惠子や大島弓子らと共に「花の24年組」と称され活躍した。米国では『ポーの一族』や『トーマの心臓』、『11人いる!』などの主要作品が翻訳出版されている。中沢啓治は広島の原子爆弾投下を題材にした『はだしのゲン』が世界的に知られる。2012年に故人となっている。

 「コミックの殿堂」は米国のコミックス業界で広く知られるアイズナー賞(Eisner Awards)の名誉功労賞にあたる。コミックス業界で高い業績を残し、多大な貢献をしてきたアーティストを顕彰する。
 「コミックの殿堂」の選考システムはやや複雑で、まず審査委員会が数名の殿堂入りを決定する。故人で名声が確立した人物が多く選出される傾向が強い、
 一方で業界関係者の投票を経て選ばれる候補者も決定する。こちらは現在も作品が読まれている大物作家が中心となる。毎回十数名が候補に挙るが、会員による投票で上位4名になった作家を殿堂入りとする。候補者も多いことから、選出されるのは非常に難関だ。これまで日本作家で投票にて選ばれたのは、大友克洋と高橋留美子の2名だけである。このほか手塚治虫と『子連れ狼』の小池一夫と小島剛夕が審査委員の選出で殿堂入りしている。
 それでも殿堂入りするか、しないか関わらず、審査委員会が萩尾望都と中沢啓治の名前を挙げたことに大きな意味がある。そこには数々のアメリカン・コミックスと並んで、両氏の作品をコミックスの歴史に残すべきとの判断があるからだ。

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