国内大手出版社のKADOKAWAは、中国における出版事業の体制を再構築する。広州市にある中南出版伝媒グループとの共同出資会社・広州天聞角川動漫有限公司に、あらたにテンセントグループが出資することを明らかにした。3社が協力することで、中国でのマンガ、ライトノベルの事業拡大を目指す。
広州天聞角川動漫有限公司は、2010年7月に設立された。中国におけるKADOKAWA(当時角川ホールディングス)のマンガ、ラノベの翻訳出版や現地の作家育成、オリジナルコンテンツの創出を目指していた。KADOKAWA側は香港法人のKADOKAWA HOLDINGS ASIA Ltdが49%、国営大手出版社の中南出版伝媒グループの子会社である湖南天聞動漫伝媒有限公司が51%を出資する。中国は出版などのメディアに対する海外出資の制限もあり、合弁相手が過半数の株式を保有するのが特徴になっていた。
今回の再編では、中南出版伝媒グループが全体の持株比率の41%にあたる分をテンセントのグループ会社に譲渡する。新たな持株比率はKADOKAWAが49%、テンセントが41%、中南出版が10%になる。
KADOKAWAは筆頭株主となるが、現地企業2社を合せると中国側が過半数。また、中南の持株比率は大きく下がり、テンセントの存在感が増す。
テンセントは1998年に中国・深センで設立されたIT企業だ。モバイル向けのコミニケーションツール「QQ」「微信」で急成長し、現在は多方面で事業を展開する。2015年のグループ売上高は約1兆6000億円と、中国の有数のIT企業である。
KADOKAWAは、今回の提携でテンセントの持つデジタルコンテンツ・プラットフォームを活かしたマンガやライトノベルの展開を目指す。2010年の段階では紙出版を重視した中南出版との提携であったが、それから6年、出版環境の変化を受けて軸足をデジタルに移すかたちだ。
またマンガ、ライトノベルの展開に加えて、中国市場でのメディアミックス戦略を共同で検討、推進するとしている。有力企業の力を借りることで、マーケットの拡大を目指す。
また今回の取り組みで、KADOKAWAの海外市場の拡大戦略がより鮮明になった。同社は今年4月には、米国で日本マンガ・小説の翻訳出版大手Yen Pressを子会社化したばかり。ここでは世界的な出版グループであるアシェットとの合弁事業としている。日本コンテンツを軸に、有力パートナーと組むのは中国のケースと同様だ。
また9月5日には、もうひとつ別の発表もされている。タイの総合出版社Amarin Printing and Publishingとの合弁会社設立である。日本マンガ、ライトノベルのタイ市場開拓を目指す。こちらも同様のスキームだ。KADOKAWAは北米、中国、東南アジアと多方面での海外展開を積極的に進めるかたちだ。