アニメスタジオのキネマシトラスが、有力企業との連携に乗り出した。2019年7月1日、キネマシトラスは出版大手のKADOKAWA、キャラクター事業のブシロードと包括的業務提携を結んだと発表した。
業務提携を期に、両社と強固な協力関係を築くとしている。今後も安定的にヒットタイトルを創出する体制を構築する。キネマシトラスの事業拡張に、つながりそうだ。
キネマシトラスは、プロダクションI.Gやホンズで経験を積んだプロデューサーである代表取締役の小笠原宗紀氏らが2008年に設立した。『東京マグニチュード8.0』や『.hack//Quantum』といった話題作で実績を重ね、丁寧な映像づくりに定評がある。2017年以降は、『メイドインアビス』、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』、『盾の勇者の成り上がり』とヒット作に続けて携わっている。
今回提携を結んだKADOKAWAとは『メイドインアビス』と『盾の勇者の成り上がり』で、ブシロードとは『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』でビジネスをしてきた。提携はそうしたつながりを強固にするものとなる。
KADOKAWAは国内出版大手で多くのアニメ製作を手がける。しかし原作の提供や製作出資は多いが、個別アニメスタジオとのつながりは薄い。2018年4月にCGスタジオENGIの設立にあたり出資をしたが、手描きでは多くのスタジオとその時々で仕事してきた。
ブシロードはトレーデイングカードゲーム、キャラクター、音楽、スマホアプリなどでキャラクターを軸に、広くエンタテイメント事業を展開する。アニメ製作の持株会社ウルトラスーパーピクチャーズに出資するが、個別スタジオと包括的業務提携を結ぶのは今回が初になる。
アニメーション制作のかつてない活況が続くなかで、アニメ製作をする大手企業は有力スタジオの獲得は年々難しくなっている。そこで両社は包括的業務提携を結ぶことでつながりの深いキネマシトラスとの関係を継続的にする。
そして今回見逃せないのは、包括提携はキネマシトラス、KADOKAWA、ブシロードの3社が関わることである。今後は3社が参加する新しいプロジェクトも期待できるかもしれない。さらにキネマシトラスが、これまでのアニメーション制作受託だけでない新しい方向を目指す可能性も高そうだ。アニメーション制作活況のなかで、従来型のアニメスタジオの経営は限界が見えているとも言われている。キネマシトラスの包括的業務提携は、生き残りに向けた1つ答えでもある。