2019年1月6日、米国カリフォルニア州のビバリーヒルトン・ホテルにて、米国映画業界の一大イベント ゴールデングローブ賞授賞式が開催された。この場で2018年に最も優れた映画・テレビドラマとして各賞の受賞者、受賞作が発表された。
アニメーション部門の最優秀作品には、スパーダーマンの複数の世界が混じりあう『スパイダーマン:スパイダーバース』が輝いた。『インクレディブル・ファミリー』、『犬ヶ島』、『シュガーラッシュ・オンラン』、そして日本の『未来のミライ』を押さえての栄冠だ。
アメコミヒーローもの、ヤングアダルトターゲットと、従来はアニメーション賞とは縁が薄いジャンルであるにも関わらず、『スパイダーマン:スパイダーバース』は昨年来賞レースで快進撃を続けている。これまでに受賞したアワードは約20にもなる。ライバルとなるウェス・アンダーソン監督の『犬ヵ島』をもやや上回る。
とりわけ劇場興行成績では『スパイダーマン:スパイダーバース』を大きく上回る『インクレディブル・ファミリー』や『グリンチ』、『シュガーラッシュ:オンライン』を寄せ付けないのは大きい。2018年の米国アニメーショ業界の事件と言ってもよいだろう。
作品評価の高さは正面から”スパイダーマン”を取り上げるのでなく、現実世界にいくつも存在する異なったバーションの異なった主人公たちが邂逅するといった作品構成にある。メタ構造的でもあるやりかたが、新しさと凝った演出を感じさせる。
米国で米国アカデミー賞以外の主要な映画賞には、今回のゴールデングローブ賞、それに影響力が大きく、投票者数も多いロサンゼルスとニューヨークの映画批評家協会を挙げることができるだろう。『スパイダーマン:スパイダーバース』は、この全てを獲得した。
実はこれまでの歴史で、3つの賞を同時に獲得したアニメーション映画はない。さらに個性の強い選考で定評があるロサンゼルス映画批評家協会とニューヨーク映画批評家協会は過去10年間でアニメーション賞で同じ作品が受賞したのは2012年の『フランケンウィーニー』のみだ。同時受賞の難しさと『スパイダーマン:スパイダーバース』への評価の高さが分かるだろう。
となると次の関心は、1月23日のノミネート発表、3月4日に最優秀賞が決定する米国アカデミー賞だろう。現在の流れから『スパイダーマン:スパイダーバース』のノミネートはほぼ確定、あとは受賞できるかどうかだ。
最大のライバルはやはり多くのアワードを獲得している『犬ヵ島』。シーズン当初に期待が高かった『インクレディブル・ファミリー』の可能性はほとんどなく、一騎打ちになりそうだ。
もし『スパイダーマン:スパイダーバース』がアカデミー賞を受賞すれば、今後米国のアニメーション映画の潮流も変わりそうだ。映画のヒットも含めて、これまで米国の映画業界で見落とされていたヤングアダルト向けの劇場アニメーションの製作が増えそうだ。それはこの分野で圧倒的なシェアを持っていた日本アニメにも少なくない影響を与えるだろう。
[2018年北米アニメーション映画 主要アワード受賞結果]
■『スパイダーマン:スパイダーバース』
ゴールデングローブ賞
ロサンゼルス映画批評家協会賞
ニューヨーク映画批評家協会賞
シカゴ映画批評家協会賞
サンフランスコ映画批評家協会賞
シアトル映画批評家協会賞
セントルイス映画批評家協会賞
コロンバス映画批評家協会賞
ノースカロライナ映画批評家協会賞
デトロイト映画批評家協会賞
オクラホマ映画批評家協会賞
ヒューストン映画批評家協会賞
フェニックス批評家サークル賞
カンザスシティ映画批評家協会賞
アフリカンアメリカ映画批評家協会賞
オンライン映画批評家協会賞
■『犬ヵ島』
サテライト賞
ワシントンDC映画批評家協会賞
トロント映画批評家協会賞 (カナダ)
サンディエゴ映画批評家協会賞
アトランタ映画批評家協会賞
ラスベガス映画批評家協会賞
ダラス=フォーロワース映画批評家協会賞
ネヴァダ映画批評家協会賞
フェニックス映画批評家協会賞
ユタ映画批評家協会賞
サウス・バイ・サウスウエスト 観客賞
ベルリン国際映画祭 銀熊賞 (ドイツ)
■『インクレディブル・ファミリー』
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞
■『未来のミライ』
フロリダ映画批評家協会賞