2018年8月31日、文化庁は2019年度(来年度)の概算要求をとりまとめた。概算要求は、国が予算を決めるにあたり、各省庁がまず必要となる予算を取りまとめたものだ。概算要求をベースに議論が行われる。
文化庁は来年度の予算に対して、かなり強気の要望を策定している。要求金額は1330億5100万円、今年度予算1077億2900万円に対して、23.5%増である。
予算伸び率が大きいひとつが、「文化芸術創造活動への効果的な支援」と掲げた部分だ。概算要求は今年度の72億3400万円から120億2400万円としている。
「文化芸術創造活動への効果的な支援」は3つの柱からなっており、そのうちひとつは「日本映画」、もうひとつは「メディア芸術」である。いずれもアニメーションに関わりの深い分野だ。
■ 文化庁メディア芸術祭に新部門「社会応用部門」、「U18部門」創設
「あにめたまご」は継続方向
メディアアート、マンガ、アニメーション、ゲーム、デジタルコンテンツを対象とするメディア芸術の関連要求予算は12億1400万円である。今年度予算より23%多い。
予算増額は、文化庁メディア芸術祭の大きな変化とも関係ありそうだ。メディア芸術祭に、日本カルチャーの活性化や海外発信のさらに大きな役割を期待するためだ。
メディア芸術祭の変化のひとつは、現在「メディアアート」「エンターテインメント」「マンガ」「アニメーション」の4分野であるが、新たに「社会応用部門」、「U18部門」のふたつを創設する構想だ。メディア芸術祭はこれまでジャンルごとの括りで顕彰をしてきた。新たな部門は、作品の機能、作家の属性への評価になる。もし実現すれば、1997年にメディア芸術祭始まって以来の改革になる。
国内においては企業との連携による関連イベントの発信強化に言及。海外の大型フェスティバルとの連携も掲げ、これらに企画出展するとしている。
メディア芸術人材育成事業として、2010年より実施されてきた若手アニメーター人材育成事業(あにめたまご)は継続事業とした。メディア芸術人材育成事業の予算も今年度の2億4000万円から2億7500万円の拡充だ。ただし増額分は若手クリエイター創作活動のためとして、新たに分野ごとの団体支援に向けられるようだ。
メディア芸術連携促進等事業への要求は3億7400万円と今年度の3億6700万円とほぼ同水準。引き続き、メディア芸術の連携、所蔵情報の整備を進める。2019年度末に「メディア芸術データベース」完成版の公開を目指すのが大きなトピックだ。
■ 若手育成や海外映画祭出品支援で映画関連予算を大幅増
「日本映画の創造・振興」事業の予算は、10億8400万円から69%増の18億3300万円を要求する。作品撮影の環境整備、国際共同製作の基盤整備、日本映画の関心喚起、映画を通じた国家ブランディングづくり、若手育成などの課題を挙げ、その支援・対策に予算を向ける。
新たな立上げを目指すのは、若手映画作家作品の上映機会を図る戦略的映画事業(9000万円)、東京国際映画祭への支援となる国際映画祭支援事業(7000万円)。
若手と海外は重点分野となり、海外映画祭への出品支援は6400万円から1億2500万円に拡大、若手作家育成は1億6400万円から2億6900万円への拡充としている。また日本映画製作支援事業も7億3400万円から10億7300万円に拡大。国際共同製作8作品を含む劇映画25作品、ドキュメンタリー10作品、アニメーション17作品、さらにバリアフリー映画字幕・音声ガイド制作・多言語字幕制作品が支援対象となる。
文化庁映画週間、日本映画情報システムの整備、アジアにおける日本映画特集上映は継続事業とする。映画撮影のためのロケーションのデータベース運用は1600万円から1億円に増額要求する。
映画関連事業の予算は、文化庁全体から見れば決して大きくない。しかし、今回の概算要求からは、映画文化施策をかなり重視していることが窺われる。