ジブリパークの基本デザイン、愛知県が明らかに 今後の焦点はプロジェクト予算と資金調達

ジブリパーク

 2018年3月30日、愛知県は国内を代表するアニメ会社であるスタジオジブリと、「ジブリパーク」の構想について確認書を締結した。愛知県長久手市の愛・地球博記念公園を「ジブリパーク」として再整備する。園内にスタジオジブリの世界観を再現する予定だ。
 確認書締結に合わせて、これまで(仮)としていた名称を正式に「ジブリパーク」とした。2020年度に着工、2022年度中の開業を目指す。

 4月25日に行われた記者会見では、スタジオジブリから提供された「ジブリパーク」の基本デザインが公開された。構想によれば、園内には「青春の丘」「ジブリの大倉庫」「もののけの里エリア」「魔女の谷」「どんどこ森」の主要な5つのエリアが設けられる。
 各エリアはスタジオジブリのアニメ映画のモチーフを活用する展示室や自然体験施設が中心になっており、ライドアクションやステージショー、物販店舗が中心の大型テーマパークと一線を画したかたちだ。これまでの三鷹の森美術館や、各種美術館で開催されてきた展覧会の延長線上にあるとも取れる。常に独自のコンセプトを打ち出してきたまさにスタジオジブリらしいと言っていいだろう。

 今回のサプライズは、開業時期を2022年度と4年後に定めたことだ。「どんどこ森」には『となりのトトロ』に登場した「サツキとメイの家」が再現されているものの、その他の施設は現時点でゼロに等しい。4年間でほぼゼロから開業に持っていくことになる。かなりのスピードである。
 もともと「ジブリパーク」の構想が明らかになり、愛知県とスタジオジブリが合意したのが2017年5月。そこから愛知県議会が調査費を補正予算に組み、11月にはジブリパーク構想推進室が設置されるなど、こちらもスピード感たっぷりだ。愛知県側の「ジブリパーク」に対する期待の高さが現れている。

 こうした手際のよい進捗の一方で、今回は基本デザインの発表としていることから、明らかになっていない点も依然多い。ひとつはプロジェクトの予算、収支計画、そして事業の運営母体である。来場者数の見込みについても現段階で明らかにしていない。これらは今後検討するとしている。
 ディズニーランドやUSJのようなテーマパークと違いライド型アクションはないが、整備地区は5つにも及ぶ。この中には、多くの建物や展示室や遊戯施設、造形が含まれている。クオリティーに妥協しないスタジオジブリの作品となれば、こうした施設も相当凝ったものになるはずだ。投資資金は少なくないだろう。
 
 また建設・整備資金をどこが負担するのかも不明だ。スタジオジブリの役割はコンセプトの提供とパークの監修とされており、現時点で資金調達や運営の主体ではない。
 愛知県が事業の主体としているが、自ら建設・整備をするならば税金からの少なからぬ投入となり、全体資金を負担する可能性は低い。運営規模もこれまでのシンプルな自然公園より大規模で複雑さが増すだけに、事業の採算性が問われる。
 このため何かしらのかたちで民間企業の協力を得ることが合理的な方向だ。企業が営利事業として受託するのか、それとも第三セクターのような運営組織を作るのか。こうした判断や組織づくりも含めて、2022年度開業は野心的な目標とも見える。今後、どのようなかたちで「ジブリパーク」が具体的に整備され、運営されるのか、今後の発表される基本構想が待たれる。

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