「君の名は。」「百日紅」も 米国アカデミー長編アニメ部門 史上最多27作品が審査対象で超激戦

第90回米国アカデミー賞長編アニメーション部門

米国の映画芸術科学アカデミーは、11月10日、2016年の第89回米国アカデミー賞長編アニメーション部門(Animated Feature Film)の選考対象作品を発表した。リストには27作品があがり、この中には日本アニメの『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』、『百日紅~Miss HOKUSAI~』、そして『君の名は。』の3作品が含まれている。
さらにスタジオジブリが出資するマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督の『レッドタートル ある島の物語』、ストップモーション・アニメーションの名門ライカが日本を舞台に制作した『Kubo and the Two Strings』もある。日本関連の作品が近年になく多く、ノミネート、そして受賞への期待を感じさせる。

選考対象作品はアカデミー賞ノミネートの審査の様々な条件をクリアした作品をリストアップしたもので、一次審査にあたる。このリストに挙げられた作品の数でノミネートされる本数も変動するが、今回はノミネート5作品に必要な16本を軽く超える27作品となった。これは2001年に長編アニメーション部門が設けられて以来過去最高になる。ノミネート入り、そして受賞には、史上最大の激戦となる。
激戦は、本数だけでない。質の高さも近年稀に見るハイレベルな作品が並んだ。例年であれば受賞してもおかしくない作品でも、ノミネートすらされない可能性もある。

日本からは原恵一監督の『百日紅』がアヌシー国際アニメーション映画祭など海外で受賞を重ね実績は十分。米国でGKIDSが配給する作品は他にフランス映画の『April and the Extraordinary World』と『Phantom Boy』があるが、この中では『百日紅』が最有力とみていいだろう。
新海誠監督の『君の名は。』の評価の高さは日本人であれば多くの人が知るが、米国での上映が7月のアニメエキスポ2016のプレミアと12月のロサンゼルスの一週間先行公開と上映がかなり限定されている。知名度の低さが懸念される。『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』はCGによるキャラクター表現の完成度の高さが売りになる。
『レッドタートル』も有力候補だ。すでにマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督は2010年に『岸辺のふたり』で絶賛を浴び、短編アニメーション部門でアカデミーに輝いている。初の長編は、世界のアニメーション関係者が心待ちにしていたものだ。

もちろんハリウッドメジャースタジオの大作CGアニメーションは、最注目である。2016年はソニー・ピクチャーズの『アングリーバード』、ブルースカイスタジオの『アイス・エイジ 5』、ドリームワークス・アニメーションの『カンフー・パンダ3』『Trolls』、イルミネーション・スタジオの『ペット』『SING/シング』、ワーナー・アニメーションの『コウノトリ大作戦!』と目白押しだ。
しかし、ディズニー/ピクサーの作品がいずれも評価が高く、ノミネート入りするのはディズニー・アニメーションの『ズートピア』『モアナと伝説の海』か、ピクサー・アニメーションスタジオの『ファインディング・ドリー』の可能性が高そうだ。

独立系作品にも十分チャンスがある。『リトル・プリンス 星の王子様と私』は映像配信のNetflixが配給する異色作。アカデミー賞ノミネートの常連ライカの『Kubo and the Two Strings』は、作品評価の高さも併せて有力候補だ。
海外映画も話題作、傑作が並ぶ。2016年のアヌシー国際アニメーション映画祭グランプリ受賞作『My Life as a Zucchini』、中国アニメーション映画史上最大のヒットになった『西遊記之大聖帰来』、ニュージランドのドキュメンタリー・アニメーション『25 April』、そして東京アニメアワードフェスティバル2016でグランプリを獲り高畑勲氏に絶賛された『Long Way North』も押さえておきたい作品だ。

27作品は選考のうえ、5本のノミネート作品に絞られる。2017年1月24日に発表される。さらに2月25日には、ハリウッドのドルビーシアターで開催されるアカデミー賞授賞式で、最優秀長編アニメーション賞が決定する。

第89回米国アカデミー賞 長編アニメーション部門 選考対象作品

『アングリーバード』
『April and the Extraordinary World』
『Bilal』
『ファインディング・ドリー』
『アイス・エイジ5』
『Kingsglaive Final Fantasy XV』
『Kubo and the Two Strings』
『カンフー・パンダ3』
『リトル・プリンス 星の王子様と私』
『Long Way North』
『百日紅~Miss HOKUSAI~』
『モアナと伝説の海』
『西遊記之大聖帰来』
『Mune』
『Mustafa & the Magician』
『My Life as a Zucchini』
『Phantom Boy』
『レッドタートル ある島の物語』
『ソーセージ・パーティー』
『ペット』
『SING/シング』
『Snowtime!』
『コウノトリ大作戦!』
『Trolls』
『25 April』
『君の名は。』
『ズートピア』

関連記事

アーカイブ

カテゴリー

ピックアップ記事

  1. 第2回新潟国際アニメーション映画祭
     今年3月に初開催されて話題を呼んだ新潟国際アニメーション映画祭が、2024年3月に第2回を迎える。…
  2. 「アニメーションの表現」
     2023年10月23日から11月1日まで開催されている第36回東京国際映画祭は、昨年より上映本数、…
  3. 『いきものさん』© 和田淳・ニューディアー/東映アニメーション
     日本を代表するアニメーション作家として、いま“和田淳”を筆頭に挙げる人は多いだろう。2010年に『…
ページ上部へ戻る