「魔女の宅急便」シリーズの作者として知られる児童文学作家の角野栄子氏が、国際児童図書評議会(International Board on Books for Young People)による2018年の国際アンデルセン賞・作家賞を受賞した。2018年は世界各国から33名ものノミネートが挙がったが、角野栄子氏は審査委員会により、その中から選ばれた。日本からの受賞は2014年の上橋菜穂子氏以来4年ぶり、日本人の受賞は1994年のまど みちお氏も含めて3人目だ。
国際アンデルセン賞は、国際児童図書評議会が子ども向けの本に貢献してきた作家と画家を顕彰する目的で1953年に設立された。歴代の受賞者には「ムーミン」シリーズのトーベ・ヤンソン氏や『黄金の七つの都市』のスコット・オデール氏らがいる。
国際アンデルセン賞は1950年代から60年以上の歴史を誇るが、受賞者は2年に一度1人しか選ばれない。作家賞の歴代受賞者は30人ほどしかいない。その授賞のハードルの高さは、児童文学のノーベル賞と呼ばれる理由のひとつだ。
角野栄子氏は、1935年東京生まれ。ブラジル滞在経験をもとに執筆したノンフィクション『ルイジンニョ少年―ブラジルをたずねて―』で作家デビューした。その後は、『ズボン船長さんの話』、「小さなおばけ」シリーズなど多数の児童書で評価を受けている。野間児童文芸賞、小学館文学賞、IBBYオナーリスト文学賞など数々の受賞を重ねている。
なかでも宮崎駿監督とスタジオジブリの手によって長編アニメーション映画化もされた「魔女の宅急便」シリーズはよく知られている。海外では英語、イタリア語、中国語、スウェーデン語などでも刊行されている。
今回の受賞は角野栄子氏の優れた作品を評価してのものであるが、それでもアニメ映画『魔女の宅急便』の世界的な人気が角野氏とその作品を広めるのに少なくない役割を果たしたのは確かだろう。2014年の受賞者である上橋菜穂子氏は、代表作『精霊の守り人』のアニメ作品が著作の世界的な普及に貢献したと述べていた。
アニメから原作・児童文学へ。アニメは日本の様々な文化の普及の触媒となっている。国際アンデルセン賞からは、そんなアニメの役割も垣間見える。