1946年に創立され日本でも最も歴史の長い映画賞のひとつである毎日映画コンクールが、2024年の作品を対象とする第79回より受賞部門を一部再編する。ひとつは男優部門、女優部門に分れられていた主演男優、主演女優、助演男優、助演女優の4つを主演俳優賞、助演俳優賞のふたつに統合する。男女を分けず対象すると同時に各部門の受賞者を2名までとして、受賞者の人数は減らさない。
もうひとつの変更はアニメーション部門だ。これまでは「アニメーション映画賞」と「大藤信郎賞」の2つのカテゴリーが設けられていたが、アニメーション映画賞は廃止、大藤信郎賞に一本化される。12月19日に42本の候補作が発表されたが、このなかから大藤信郎賞のみ1作品選ばれる。
大藤信郎賞は、日本のアニメーション分野の先駆者である大藤信郎を記念して1962年に設けられた。国内では最も長い歴史を持つアニメーションアワードとしてお馴染みだ。第1回は手塚治虫監督の中編『ある街角の物語』、第2回は東映動画(現東映アニメーション)の長編『わんぱく王子の大蛇退治』、さらに短編作品の受賞も少なくない。幅広いジャンル、フォーマットから選ぶのが特徴だ。
一方で1980年代以降、長編アニメーション映画の制作が増えることに合せて、それらの受け皿の意味もありアニメーション映画賞が設けられた。こちらは第1回は宮﨑駿監督の『魔女の宅急便』が受賞作。以降も長編映画が多く受賞し、短編も多い大藤信郎賞と切り分けされていた。
アニメーション映画賞は映画の総合評価、大藤信郎賞は実験的な表現にもとづいて選考としてきたが、この区分は必ずしも明確ではなかった。さらに2016年以降は、大藤信郎賞の受賞作品を長編が多くを占め、一方のアニメーション映画賞では2022年に6分間の自主制作『高野交差点』(伊藤瑞希監督)が選ばれている。
今回のアニメーション映画賞でなく大藤信郎賞に一本化するのは長い歴史とブランドに加えて「芸術的・実験的に優れたアニメーション作品を選ぶ」とのスタートの原点に戻るともみられる。また通常の映画賞と異なり短編と長編、自主制作と商業映画の全てを対象として、劇場公開の有無も問わないユニークな位置づけになる。それだけに受賞作を決める選考員は選択眼といかに基準を設けるかが問われることになる。