「トンコハウス映画祭」のオープニングパーティーが、4月26日にEJアニメシアター新宿にて行われた。27日(土)より5月26日(日)まで、約1ヶ月間に渡るイベントの前夜祭である。
当日はトンコハウスの共同創業者である堤大介さんが登壇し、上映する作品ひとつひとつを思い出も交えて解説した。さらになぜいま映画祭企画なのか、トンコハウスへの想いも語った。
トンコハウスは米国カリフォルニア州バークレーにある小さなアニメーションスタジオだ。2014年にピクサーで活躍した堤大介さんとロバート・コンドウさんが設立した。
スタジオのきっかけとなった『ダム・キーパー』をはじめ『ムーム』、『ピッグ 丘の上のダム・キーパー』と、世界中で絶賛される作品を創り出している。華々しい経歴だが苦労も少なくないという。それでもドキドキやワクワクを原動力に創造に突き進む。
今回の映画祭では、世界中から20作品以上の素晴らしいアニメーションを集めた。キュレーションはトンコハウスである。
また映画を上映するだけでなく、いくつものワークショップ、トーク、さらに映画館を飛び出したスケッチツアーまで用意する。スタジオのスタッフやゲストまで、世界トップクラスのクリエイターがこれに協力するのもトンコハウスのネットワークがあればこそ。
会場内には「トンコハウスカフェ」が設けられた。魅力的なメニューに加えて、トンコハウスのスタジオを細部まで再現したこだわりに驚かされる。机、イス、スケッチブック、本、ピンナップ……並べられたひとつひとつが吟味され、まさにスタジオを訪問した気分になる。
小さなアニメーションスタジオが映画祭まで企画するのは珍しい。これを堤さんは「Inspire Curiosity (=好奇心を刺激する)」と説明する。映画を作るだけでなく、そこから新たな創造につなげることを目指しているのだ。映画祭の企画が全て「Inspire Curiosity」につながっている。
「Inspire Curiosity」は、上映プログラムにも現れている。トンコハウスの作品はもちろん、アニメーショ史の傑作と名高い『木を植えた男』(フレデリック・バック)、『父と娘』(マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィッド)、魅力的なコマ撮りアニメーションたち、日本の見里朝希さんが学生時代に撮った『あたしだけをみて』といった最新の潮流まで揃う。それはトンコハウスのメンバーに「Inspire Curiosity」を与えてきた作品だ。
堤さんはアニメーションの魅力を”マジック・ショー“だと話す。「ないものがあるとか、止まっているものが動いて見えるとか。これが好きなんです。今回の映画祭もどうやってこれをやったのといった作品が揃っています」。
そうしたなかからトンコハウスの新たな作品も生まれてくる。今回のオープニングパーティーの目玉となった新作 『ONI』(仮題)の製作発表もそうしたひとつだ。コマ撮りアニメーションスタジオとして世界的に知られる日本のドワーフとのジョイントプロジェクトになる。まさかのトンコハウスのコマ撮り進出である。
実は「Inspire Curiosity」は、映画祭の前から始まっていた。1439人が参加し、目標額を大きく超える1246万円を集めた映画祭のためのクラウドファンディングの成功である。
クラウドファンディングを担当した広報の山本麻友美さんは、「コアなファンは支持してくれると思ったのですが、Twitterなどを見るとトンコハウスを知らなかった人たちもかなりいました。クラウドファンディングを通じて外の人に伝わったのも大きかったです」と説明する。堤さんも「クラウドファンディングからコミュニティ作りだったんですよ」と話す。
「トンコハウス映画祭」は観るだけの映画祭ではない。アニメーションを通じた体験を提供する。「観て」「聴いて」「手を動かし」「体験する」ことで、映画祭という空間と体験を創り上げた。
それはアニメーションを通じた、創造のための「Inspire Curiosity」を広げる場所なのだ。
トンコハウス映画祭
https://tonkohousefilmfestival.com/