アカデミー賞長編アニメーションのエントリー作品発表、国際化が顕著に

米国アカデミー賞長編アニメーション部門

 2024年11月21日、米国の映画芸術科学アカデミーは第97回アカデミー賞の長編アニメーション部門、ドキュメンタリー部門、国際映画部門のエントリー作品は発表した。このうち長編アニメーション部門でエントリー資格を得たのは31作品。前年の33作品に続き、高水準の本数となった。
 アニメーション部門のエントリー資格を得た作品は、そのまま作品賞を含む関連する他部門へのエントリー資格も自動的に得る。

 31本のうち日本からは山田尚子監督の話題作『きみの色』、スタジオポノックの『屋根裏のラジャー』、押山清高監督の『ルックバック』が入った。長編アニメーションを60分以上と定義するアワードや映画祭も少なくないなかで、映画芸術科学アカデミーは40分以上の作品を長編と定義する。これにより56分の『ルックバック』がエントリー資格を得た。
 さらに今回は日本と海外の共同製作作品が2本あった。『化け猫あんずちゃん』は日本のシンエイ動画とフランスMiyuプロダクション、『Ultraman: Rising』は円谷プロダクションと米国Netflix、ILMとの製作だ。合せて5本と、引き続き日本の存在感が大きい。
 さらに日本に関連する作品として、監督を『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』などで知られる神山健治が監督を務める『ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い』、主人公と旧日本兵との交流を描いた『ケンスケの王国』などもある。

 また今年は、米国以外の有力作品が多くエントリーされているのが目を惹く。全31本のうち共同製作を含めて米国映画は12本と全体の3割程度に過ぎない。
 『リンダはチキンがたべたい!』、『Flow』、『シロッコと風の王国』、『スルタナの夢』、『メモワール・オブ・ア・スネイル』など、世界の映画祭を席巻した作品が並ぶのは圧巻だ。これは映画芸術科学アカデミーが近年、海外作品を積極的に取り入れようとしていることも反映していそうだ。
 2024年からは各国が1作品を推薦する国際映画部門に選出されたアニメーション映画は、そのままアニメーション部門のエントリー資格も得ることになっている。ラトビアの『Flow』、パキスタンの『ガラスワーカー』がそれにあたる。米国公開されていない海外アニメーションにチャンスが広がる。米国中心の商業大作の賞とみられてきたアカデミーだが、世界の頂点を目指す部門として性格が変りつつある。

 今回エントリー資格を得た作品は、投票によりまずノミネート5作品に絞り込まれる。アニメーション支部メンバーのほか、アカデミーのそれ以外のメンバーも要求される本数の作品を鑑賞することを条件に投票が可能だ。エントリー作品から最大5作品を選んで投票する。
 2025年1月17日にノミネートを発表。最優秀全アカデミー会員の投票で決められる。2025年3月2日にハリウッド地区のドルビーシアターで実施される授賞式で、受賞作品が発表される。

[米国アカデミー賞長編アニメーション部門ノミネート作品]

『アートカレッジ1994』 (中国)
『Captain Avispa』 (ドミニカ)
『リンダはチキンがたべたい!』 (フランス)
『きみの色』 (日本)
『The Day the Earth Blew Up: A Looney Tunes Movie』 (米国)
『怪盗グルーのミニオン超変身』 (米国)
『Flow』 (ラトビア)
『ねこのガーフィールド』 (米国)
『化け猫あんずちゃん』 (日本/フランス)
『ガラスワーカー』 (パキスタン)
『屋根裏のラジャー』 (日本)
『インサイドヘッド 2』 (米国)
『ケンスケの王国』 (英国)
『カンフー・パンダ 4 伝説のマスター降臨』 (中国)
『Living Large』 (チェコ)
『ルックバック』 (日本)
『ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い』 (米国)
『マーズ・エクスプレス』 (フランス)
『メモワール・オブ・ア・スネイル』 (オーストラリア)
『モアナと伝説の海2』 (米国)
『Piece by Piece』 (米国)
『Rocket Club: Across the Cosmos』 (カナダ)
『シロッコと風の王国』 (フランス)
『Spellbound』 (米国)
『スルタナの夢』 (スペイン)
『That Christmas』 (英国)
『ユニコーンのテルマ』 (カナダ/米国)
『トランスフォーマー/ONE』 (米国)
『Ultraman: Rising』 (日本/米国)
『Wallace & Gromit: Vengeance Most Fowl』 (英国)
『野生の島のロズ』 (米国)

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