文化庁は、2012年3月7日に第68回を迎えた芸術選奨文部科学大臣賞と新人賞を発表した。芸術選奨は、国の芸術各分野の発展と顕彰を目的に実施されている。演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術、放送、大衆芸能、芸術振興、評論、メディア芸術の11部門から大臣賞と新人賞が選ばれる。このうちメディア芸術部門からは、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻教授でアニメーション作家の山村浩二氏となった。
メディア芸術部門は2008年より設けられており、芸術選奨の中では歴史は浅い。また部門はアニメーションのほか、マンガ、ゲーム、メディアアート、インタラクティブアートなどを広くカバーするためアニメーションからの受賞者は決して多くない。
これまでメディア芸術部門で細田守氏、長井龍雪氏、沖浦啓之氏、映画部門で高畑勲氏、片渕須直氏などスタジオを中心としたアニメ映画の監督の受賞はあるが、アニメーション作家では山村浩二氏が初の受賞となる。日本のアニメーション表現の豊かさを示したかたちだ。
文化庁は山村浩二氏の授賞の理由として、2017年に発表された『山村浩二 右目と左目でみる夢』(「サティの「パラード」」と「怪物学抄」)の成果を挙げている。しかし、実際には2000年代初頭からの国内外で活躍を評価したものと言っていいだろう。
山村氏は2002年に発表した『頭山』にてアヌシー、ザグレブ、広島、『カフカ 田舎医者』でもオタワと広島の各国際アニメーション映画祭でグランプリを受賞している。世界4大アニメーション映画祭の全てグランプリを獲得する快挙を成し遂げている。
またアニメーション作家の商業的な自立が難しいとされると時から作家性の高い自身の作品を作り続けた。アニメーションの在り方を提示する部分でも、大きな役割を果たしている。