グラフィニカがTYOアニメーションズ買収 社名はゆめ太カンパニーに変更

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 アニメーション制作会社の再編が、また進みそうだ。CGや2Dのアニメーション制作の新興スタジオであるグラフィニカが中堅アニメスタジオのTYOアニメーションズを買収、子会社化することが明らかになった。2017年11月30日、メモリーテック・ホールディングスとAOI TYO Holdingsの両社が発表した。
 メモリーテック・ホールディングスは、AOI TYO Holdingsの子会社であるティー・ワイ・オーが保有するTYOアニメーションズとリアル・ティの2社の株式の全てを11月30日付で取得した。リアル・ティはメモリーテック・ホールディングスの子会社に、TYOアニメーションズはメモリーテック・ホールディングスの子会社であるグラフィニカの子会社になる。
 ティー・ワイ・オーは、TYOアニメーションズの株式の100%、リアル・ティの90%を保有していた。譲渡価格は明らかにされていない。
 
 またTYOアニメーションズは、11月30日付で社名をゆめ太カンパニーに変更した。同社は、もともと2009年にゆめ太カンパニー(旧)とハル・フィルムメーカーのふたつの制作会社が合併して誕生した。この時に社名をTYOアニメーションズに変更したが、8年ぶりに旧社名が復活することになる。
 ゆめ太カンパニーの代表取締役社長 執行役員として、TYOアニメーションズの代表取締役だった山口聰氏が引き続きスタジオを運営する。後藤史臣氏、漆山淳氏のふたりのプロデューサーが執行役員となる。さらに非常勤の取締役として、メモリーテック・ホールディングスの伊藤暢啓氏、グラフィニカの原岳史氏が就任した。

 TYOアニメーションズは、1986年に設立されたゆめ太カンパニーと、1993年に設立されたハルフィルムメーカーのふたつのアニメーション制作会社に源流がある。「たまゆら」シリーズなどが代表作だ。テレビCMなど映像制作の大手ティー・ワイ・オーが2000年代後半に進めた多角化戦略の一環として、同社のグループ会社となっていた。
 しかし、急速な多角化が当初の思惑どおりには進まず、経営基盤を弱くした。このためティー・ワイ・オーは、2010年前後に円谷プロダクション、デジタル・フロンティア、5pb.、動画工房といった子会社を次々に手放した。TYOアニメーションズとアニメーションのポストプロダクション事業のリアル・ティは、同社の傘下にある数少ない異ジャンルのグループ会社であった。

 ティー・ワイ・オーは、その後、テレビCMなどの事業に集中することで急激に業績を回復、同業大手のAOI Pro.との持株会社設立でさらなる事業強化を決めている。その経営統合が2018年1月に迫るなかで、非中核業務としてTYOアニメーションズとリアル・ティの分離を決めたとみられる。
 買収するメモリーテック・ホールディングスは、映像サービスのトータルソリューションを掲げる。DVDやCD、Blu-rayのディスク製造の大手として知られるが、コンテンツのデジタル化のなかで将来的には事業の縮小も予想される。そこでグラフィニカを通じて手がけていたアニメーション制作事業の拡大と強化に動いた。
 グラフィニカは、ゴンゾのCGアニメーション部門が独立して2009年に設立。メモリーテックグループのキューテックが出資をしていた。
 アニメーションのCG映像に強みをみせ、2014年の映画『楽園追放 -Expelled from Paradise-』ではセルスタイルのCGアニメーションで注目を浴びた。現在はCGのほか、手描きアニメ、デジタル作画なども積極的に手がける。2017年10月からは、初の30分枠テレビアニメシリーズの単独元請となる『十二大戦』を制作し、勢いに乗っている。ゆめ太カンパニーを子会社にすることで、さらに事業領域と規模を拡大しそうだ。

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