CGアニメーションの大手企業グラフィニカが、新時代を見据えたアニメーション技術開発を積極的に推進する。2020年10月1日付の組織改編で、新たに「リアルタイムレンダリング(RTR)開発準備室」を設置した。準備室ではゲームCG の画像生成などで使われるRTRを用いたアニメーションの映像制作を本格的に進める。
当初は準備室としてスタッフは他部署との兼任となっているが、2021年春からはRTR開発室とすることを目指す。RTRのニーズを視野にいれ、今後さらに業務を拡大する方針だ。
現在のCGアニメーション制作では、プリレンダリング(事前描画)が主に使用されている。プリレンダリングは写実的な質感やアーティスティックな映像の制作を得意とし、映画やCMなどクオリティ重視する映像制作で好まれる。しかしプリレンダリングは、映像を完成させるレンダリング作業に多大な時間を必要とするのが課題になっている。
一方でRTRでは映像を制作するにあたり複雑な計算処理が発生しないことから、その場の操作に応じて文字どおりリアルタイムで描画が出来るのが特徴だ。プレイヤーの動きに合わせた動きが求められるゲーム分野や生放送番組での活用では強みを持つ。プリレンダリングと異なる特性は、CGアニメーションの表現領域も広げるのにも大きな役割を果たしている。
これまで、グラフィニカでは、プリレンダリングのCGアニメーションやグループ会社のゆめ太カンパニーなどを通じた手描きアニメなどで高い実績を持っている。さらにRTRを加えることで、様々なニーズに応じたアニメーションを提供することが可能になる。グラフィニカが狙うのは、インタラクティブ性を重視したユーザーの「体験価値」の高い映像コンテンツの制作だ。
グラフィニカの準備室では、新しい開発技術やノウハウの集約と社内共有を目指す。最先端テクノロジーを活用したアニメーション制作のイノベーションを推進するとしている。
グラフィニカは2009年にゴンゾのデジタル部門がスピンオフするかたちでスタートした。当初はCG制作が中心だったが、現在は作画や美術、デザイン、撮影、編集といった幅広い事業部門をカバーする。2019年には映画『HELLO WORLD』の元請制作で注目を浴びた。
さらにアニメだけでなくゲーム、CM、実写 PV、遊技機など広い分野で映像制作を手がける。新しいテクノロジーを積極的に取り入れることで、さらに広いニーズに対応できる総合アニメーション会社を目指す。