実写? 音楽? アニメーションの可能性を拡張する新千歳の日本コンペティション

新千歳空港国際アニメーション映画祭

 2017年11月2日から5日まで第4回新千歳空港国際アニメーション映画祭が開催された。今年でまだ4回目に過ぎないが、アニメーションの新たな可能性を問いかける個性たっぷりの映画祭になっている。
 そもそも国際空港を会場にする時点で相当常識外れだが、ユニークなのは会場だけでない。むしろプログラムの組み立てに、チャレンジ精神が発揮されている。日本の短編を集めた日本コンペティション部門も、そうした新しさがたっぷり盛り込まれていた。

 今年の日本コンペティション部門の公式上映作品は全部で13本。そのうち1/3近い4本がミュージックビデオ(MV)となった。映画祭にはこれとは別にミュージックアニメーションコンペティションも設けているから、音楽に結びついたアニメーションへの傾倒ぶりが窺える。
 MVというと、音楽を引き立てる、すでに存在する別の作品のための作品というイメージもまといつく。あるいはキュートなキャラクターが音楽に乗って軽やかに踊った今回の出品作「ENJOY MUSIC CLUB『そんな夜』」のように、商業エンタテイメントの雰囲気も漂う。しかしそれらは日本コンペティション部門の上映作品と括られることで、映像表現のなかの多様性のひとつとしてはまる。

 表現する手段の多様性も拡張している。佐竹真紀監督の「Pivot」にはとりわけ驚かされた。街中心となっている煙突を様々な方向から写真を撮り、コラージュのように積み重ねていく作品だ。そこから煙突と街の関わり、歴史が浮かび上がる。しかしその手法は、物体の動きを創り出し、表現してきた伝統的なアニメーションの考え方とはだいぶ異なる。
 幸洋子の『電気100%』も同様だ。タイ旅行の想い出を、銭湯の湯の中でまるでエッセイかのように話し続ける。こちらも街の写真や子どもたちの描いた絵をコラージュのように画面に張り込んでいく。「角銅真実『窓から見える』」は、スマホで撮った実写映像が大きな役割を果たしている。実写や写真をコラージュし、それがむしろアニメーションよりも映像の主体になっている。
 新千歳は従来のアニメーションの枠から逸脱するよう作品を紹介することで、アニメーションとは何かを問い直し、アニメーションの可能性を追求しているかのようだった。

 一方で、いかにも短編アニメーションといった作品もあった。宮嶋龍太郎監督の『AEON』は、モノトーンでダイナミックに変り続けるアニメーションの動きの快感を与える。内に秘めた感情を吐露するかのような『染色体の恋人』(矢野ほなみ監督)、あるいはシュールなストーリーと絵を積み重ねる『here AND There』は、いかにも短編アニメーション的だ。
 日本グランプリに輝いたのは、関口和希監督の『死ぬほどつまらない映画』だった。奇妙なキャラクターたちが、シュールなストーリーを繰り広げる。「みんながいいという映画を、自身はとてもつまらないと思った」という作者の個人的な経験から生まれた作品だ。しかしこれだけ幅広い作品が揃うと、『死ぬほどつまらない映画』がむしろ誰にでも分かりやすい作品と感じられたのがまた面白かった。

新千歳空港国際アニメーション映画祭2017
http://airport-anifes.jp/

[日本コンペティション]公式上映作品

■ 「ENJOY MUSIC CLUB『そんな夜』」
   監督 : WHOPPERS (サヌキナオヤ & ずっく)
■ 「むかしの山」
   監督 : 辻直之
■ 「Pivot」
   監督 : 佐竹真紀
■ 「AEON」
   監督 : 宮嶋龍太郎
■ 「here AND there」
   監督 : 小光
■ 「角銅真実『窓から見える』」
   監督 : 山形一生
■ 「Mad Love」
   監督 : 山田遼志
■ 「Bulse」
   監督 : 野々上聡人
■ 「死ぬほどつまらない映画」
   監督 : 関口和希
■ 「Special Favorite Music『Royal Memories』」
   監督 : 奥田昌輝
■ 「染色体の恋人」
   監督 : 矢野ほなみ
■ 「心悸の均衡」
   監督 : 高橋良太
■ 「電気100%」
   監督 : 幸洋子

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