JCS2017閉幕、 過去最大規模も会場動線などに課題

Japan Content Showcase2017(JCS2017)

 2017年10月23日から26日までの4日間、東京国際映画祭と連動するコンテンツ国際見本市Japan Content Showcase2017(JCS2017)が、都内で開催された。23日から25日までは渋谷エクセルホテル東急を会場に音楽マーケットTIMMが、24日から26日は池袋サンシャインシティを会場に映画・テレビ番組・アニメーションの国際見本市が実施された。
 期間中は、昨年の356団体を上回る371団体の出展があり、バイヤーも昨年の1539名よりやや多い1549名の参加があった。バイヤーの約2/3は海外からと国際色の強いものとなった。台湾のナショナルパビリオンが大きな賑わいを見せるなど、海外からの出展ブースも盛況で、売る側と買う側の取引の両サイドからマーケットが活用されていることが感じられた。

 近年、力を入れているイベントやセミナーも充実していた。渋谷で8つ、池袋で20の企画が設けられたが、映画・テレビ番組、アニメーションからマンガ、舞台・ミュージカル、音楽まで幅広いジャンルがテーマになるのは、JCSならではだ。
 米国、中国、中南米など幅広い地域のビジネスがテーマになり、スポーツやVRといった細心のトレンドとコンテツを結ぶつけた企画も多く、多彩だった。4日間のセミナーを聞けば、現在の世界のコンテンツ状況を一望できそうだった。

 2017年は、引き続きアニメやマンガに関するセミナーが多く設けられた。「アニメ産業レポート2017」の調査を解説する「アニメ業界最前線 ~日本のアニメーションの現状~」、「TVアニメ『NARUTO -ナルト-』における海外展開」、「中国のACGN(アニメ・コミック・ゲーム・ノベル)マーケット動向」、「マンガの海外展開と映像化展開について」、「アニソンメーカー連合による世界最大アニソンサービスANiUTaの展開」、「地方×アニメ等のタイアップによる各地の展開について」、「アニメ制作会社等のピッチ&バイヤーとのマッチング」などである。
 「動画配信における日本コンテンツの可能性」や「日本発、世界標準ミュージカル。2.5次元ミュージカルの可能性」も、アニメビジネスとの関係が深い。音楽が中心のTIMMでも「アニソンの世界展開における現状と可能性」と題して、フライングドッグ代表取締役社長の佐々木史朗氏、ランティス代表取締役社長の井上俊次氏が講演をした。全体の1/3以上がアニメやマンガと関連する内容だった。
 これらは海外のコンテンツビジネスにおけるアニメの存在感の大きさの現れでもある。出展ブースでも、東映アニメーション、トムス・エンタテインメント、アニプレックス、東宝、ポニーキャニオンといったアニメを得意とする企業が例年より大きなブースを構えていたのが印象に残った。

 開催規模では毎年着実に成長するJCSだが、2017年は運営面では懸念が残った。ひとつは会場の配置と動線だ。収容スペースの問題から2017年は、映像部門を昨年のお台場のホテルから池袋のサンシャインシティコンベンションセンターに移動した。
 会場の面積は大幅に広がったが、前年までのお台場、さらにその前の六本木ヒルズがワンフロアに全てがまとまっていたのに対し、出展ブースが3つのフロアーに分断されたかたちとなった。さらにセミナーやスクリーニングは別会場になる。動線が分かり難いことに加えて、それを移動するたびに入口でバーコードチェックを受けるという煩雑さに戸惑う参加者が多かった。

 3つのフロアーは、「テレビ・映画」、「アニメーション」、「番組販売以外のサービスと非営利団体」とざっくりと別けられたが、これが逆に参加者の回遊を妨げる結果になった。とりわけ「番組販売以外のサービスと非営利団体」のフロアは人の流れが少なかった。
 合理性を考えたゾーン分けではあるが、実際には大手テレビ局の販売する番組にはアニメが多く含まれ、アニメ中心の会社でも実写映画を扱っていることは多い。そもそもJCSは、参加者に多彩なジャンルのコンテンツに触れて欲しいと別々に開催されていた3つ見本市であるTIFFCOM、TMMI、TIAFを統合してスタートしたはずだ。2年前のTMMIの別会場化も含めて、そうした趣旨に逆行してはいないだろうか。

 また簡素な会場の設えにも、参加者から厳しい意見をいくつか聞いた。イベント運営の予算との兼ね合いは理解できるが、わざわざ時間と費用をかけて海外から来る参加者が満足出来るビジネス環境を提供できているのかは検討する必要はあるだろう。
 国際見本市の運営も国際競争の時代である。アジアの近隣の都市で、より環境の優れたコンテンツ見本市があればビジネス取引は簡単にそちらに移動する。十数年かけてアジアを代表する国際見本市に育ったイベントだけに、その機能を維持することに力を向ける努力は必要だろう。

Japan Content Showcase2017(JCS2017)
http://www.jcs.tokyo/ja/

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