5月13日に発表された東映アニメーションの2021年3月期決算は前年比で減収減益となった。しかし下げ幅は小さく、過去3番目に高い業績で海外事業は過去最高となった。
連結売上高は515億9500万円(5.9%減)、営業利益155億300万円(3.7%減)、経常利益160億4000万円(2.5%減)。当期純利益110億6700万円(3.2%減)である。コロナ禍で映画興行や商品の店舗販売、イベント・催事の中止・延期などの影響を受けているなかで、事業体力を発揮した。
好調だったのは海外事業で、映像製作・販売事業では海外向けが前年比12%増の126億6400万円、版権事業では海外版権が6%増の157億9000万円だった。売上高全体に占める海外比率は58%と全体の半分を超えた。これまでシェアの大きかったアジアだけでなく、北米、ヨーロッパも拡大基調だ。
期中のトピックはサウジアラビア向けの大作映画の制作である。また配信も引き続き好調で、中国向けで大口販売のタイトル数が増えたほか、全世界で販売が拡大しているという。
版権事業では引き続きアプリゲーム向けのライセンスが大きく、「ドラゴンボール」シリーズと「スラムダンク」が人気だ。地域別ではアジアと北米が二大市場になっている。
海外は今後も注力事業になる。中長期の戦略でもさらなる拡張、地域展開拡大を目指す。注目されるのはハリウッドビジネスへの参入を掲げていることだ。すでに日中米共同の『The Monkey Prince(仮)」』制作が進むが、今後もこうした取り組みは増えそうだ。
中国市場、そしてアジア市場開拓も進める。上海にはコンテンツ企画製作会社設立しており、輸出だけでなく現地でのコンテンツ創出も視野に入る。
セグメント別では、アニメーション制作や番組販売、ビデオソフトなどの映像製作・販売事業が、売上高197億6600万円(0.8%減)。営業利益は47億9800万円で5.8%増加している。
しかし劇場アニメは作品数が減少し、『ONE PIECE STAMPEDE』の反動があった前年の17億1000万円から10億1000万円に落ち込んだ。テレビアニメもコロナの影響があり、6%減の27億2000万円。ただし22年3月期は制作本数の増加や大型作品があることから劇場、テレビとも大幅な伸びを予想している。
逆に前年微増の5億5000万円の売上げだったコンテンツ(DVD、ブルーレイなど)の22年の予想は、2億8000万円と大幅減を予想している。
版権事業は売上高289億9700万円(2.5%減)、営業利益は142億5700万円(1.7%減)の減収減益。国内でも「ドラゴンボール」シリーズのゲーム化権販売が好調だったが、前年あった『ONE PIECE STAMPEDE』タイアップ・キャンペーン向けの反動が大きかった。
商品事業は24億6600万円(44.0%減)、営業損失が1億8300万円。こちらも『ONE PIECE STAMPEDE』の反動に加えて、商品を販売する店舗の営業自粛が響いた。
好調の続く東映アニメーションだが、22年3月期の業績予想は保守的だ。売上高は5100億円、営業利益110億円、経常利益113億円、当期純利益は76億円といずれも前期マイナスを見通す。アプリゲーム化権販売や巣ごもり需要の鈍化を前提にする一方で、新型コロナウィルスの影響リスクは依然あるとするためだ。
ただし中長期の成長戦略は、意欲的である。今後は『ドラゴンボール超』劇場版最新作、『SLAM DUNK』アニメーション映画化、円谷プロダクションと協業するCGアニメ『KAIJU DECODE 怪獣デコード』、日中米合作『The Monkey Prince(仮)』などの大型企画が並ぶ。
さらに国内市場から海外市場、キッズ向けからハイエンド向け、原作ものからオリジナルと、全方位に展開をしていく。新規IP創出数とIPライフサイクルの長期化も目指す。