インターネットを利用した各種サービス提供の株式会社DMM.comが、アニメ製作事業に本格進出する。2017年3月10日、DMM.comはアニメレーベル「DMM pictures」の設立を発表した。
アニメーション事業部を中心に、ライセンスビジネスへの参入、製作委員会への出資をする。そのうえで、世界で通用するIP(Intellectual Property:知的財産権)を創出する。国内だけでなく海外ビジネスの拡大も目指す。レーベルはその旗艦ブランドの位置づけになる。
事業規模は明らかにされていないが、今回発表された出資先タイトルからは、かなり大掛かりなプロジェクトになることが窺われる。現時点で公表されたのは5作品、『銀河英雄伝説』、『有頂天家族2』、『DIVE!!』、『喧嘩番長 乙女 -Girl Beats Boys-』、『捏造トラップ』である。
このうち4月放送開始の『有頂天家族2』は、P.A.WORKSがアニメーション制作を務めたヒット作品の第2弾。また『DIVE!!』はフジテレビのアニメブランド「ノイタミナ」の夏期の作品だ。いずれも大型タイトルと言っていいだろう。
とりわけ注目されるのは、『銀河英雄伝説』である。本作は2015年8月にプロダクション I.Gより制作決定が発表されていた。今回、DMM.comは『銀河英雄伝説』の海外に関する権利、さらに国内ライセンスの一部も取得した。同社の目指すライセンスビジネス、海外展開の足掛かりになる可能性がある。
一方で、『喧嘩番長 乙女 -Girl Beats Boys-』はproject No.9とA-Real、『捏造トラップ』はクリエイターズインパックと新興の制作スタジオが起用されている。こちらはやや小型のプロジェクトになると見られる。それだけに、新しい挑戦が期待される。
DMMグループは、1999年に設立。インターネットのビデオ販売、動画配信事業を起点に、ネットを基盤とした様々なビジネスを拡大した。現在は、映像配信サービスのほか、電子書籍、オンラインゲーム、オンライン英会話、ネット証券、クラウドソージングなど多くの事業を持つ。DMM.comはグループの中でサービス事業の統括をする位置づけにあるが、このなかにアニメが加わることになる。
ただし、DMMのアニメ進出には意外感は小さい。すでにDMMはオンラインゲームで大人気を博し、アニメ化作品もヒットした『艦隊これくしょん』や『刀剣乱舞』といった大型IPを保有する。IPビジネスの大きさ熟知している。それだけにアニメについても主体的に関わろうとするのは自然の流れだ。
今後は、他社作品の投資だけでなく、自社IPのアニメ化も視野に入るだろう。同時に、有力IPの自社他事業への活用も考えられる。2017年1月にDMM.comの代表取締役社長に就任した片桐孝憲氏は、前職のイラスト交流サイトpixivの代表取締役社長として海外における日本のアニメ・マンガといったポップカルチャーの人気熟知している。ここからアニメの海外展開とつながる。
海外での日本アニメビジネスの伸長、国内でのビジネスの多様化による拡大で、近年、アニメビジネスへの新規参入が増えている。好調とされるアニメビジネスだが競争は激化の一途だ。
そのなかでDMMが、どのように勝ち抜いていくのか。業界から大きな関心を集めるのは間違いない。
[DMM picturesの予定タイトル]
■ 『銀河英雄伝説』 制作会社 プロダクション I.G 放送時期未定
■ 『有頂天家族2』 制作会社 P.A.WORKS 2017年4月~
■ 『DIVE!!』 制作会社:ゼロジー 2017年7月~
■ 『喧嘩番長 乙女 -Girl Beats Boys-』 制作会社 project No.9×A-Real 2017年4月~
■ 『捏造トラップ』 制作会社 クリエイターズインパック 2017年7月~