IT大手のDMM.com(以下、DMM)が、アニメーション制作事業に進出する。DMMは2023年3月30日付で、アニメーション制作会社の株式会社CUEを設立したと発表した。
代表取締役社長CEOには、プロダクションI.G出身の黒木類氏が就任、またDMMのコンテンツクリエイティブ本部本部長鶴田直一氏が取締役COOに、取締役(CFO)は日下部栄治氏が務める。黒木氏はプロダクションI.Gで執行役員・制作部長などの経験があり、『PSYCHO-PASS』や『黒子のバスケ』などをプロデュースしてきた。現場で豊富な経験を新会社で活かすことになる。
会社名の「CUE」には、アフレコ現場でのスタート合図とビリヤードで球を打つ道具であるキューに由来している。ビリヤードのボールのようにブレイクし、世界中に広がっていく作品を生み出すことを目指す。会社紹介では主な事業として「TVシリーズ・映画・短編等アニメーション作品の企画、プロデュース及び制作」を挙げている。
DMM.comはインターネット上に会員数約4000万人の総合サービス「DMM.com」を展開するIT関連の大手企業だ。2010年代後半より、市場拡大するアニメ分野にも積極的に進出してきた。いくつものアニメ作品に製作出資するほか、2017年にはアニメレーベル「DMM pictures」をスタート、2022年にはアニメを中核に据えたサプスクリプション型の映像配信プラットフォーム「DMM TV」もスタートしている。アニメ分野の総合企業のかたちを構える。
今回はさらにこれにアニメーション制作が加わる。アニメの企画・開発・製作出資、制作さらに流通・配信まで、全方位でアニメ事業が揃う。
スタジオ設立の理由としてDMMは、現在世界的にアニメの人気の高まっていることをあげる。そのなかで高品質なアニメを提供できる環境を追求する。企画からマルチメディア展開まで一気通貫で手掛けるとする。
近年、アニメ作品のニーズが高まるなかで、人材不足、そして制作をするスタジオの数も大きく不足している。有力スタジオでは数年先まで受注が埋まっていることも珍しくない。
そうしたニーズを見越してアニメスタジオの新たな立ち上げも昨今は増えている。アニメ関連の有力企業が設立に関わることも多い。また有力企業が機動的に対応できるアニメスタジオとして、自社グループに組み込むことも増えている。今回のDMMの動きもそのひとつと言えるだろう。