アヌシー映画祭 学生コンペ部門に日本から4作品 TV部門はNetflixから

シャルロット・ガストー(Charlotte Gastaut)

 世界最大のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭が、2019年コンペティション部門の公式作品第2弾を発表した。前回は短編部門の一般作品が中心だったが、今回は学生部門とテレビ部門、そして受託作品部門の3つである。これで長編映画を除くコンペティション部門が出揃った。
 学生部門のオフシャルコンペティョンは世界24ヵ国から48作品。テレビ部門24作品、受託部門23作品。テレビ部門、受託部門は近年になく数が多く、アヌシーが両部門の強化に動いていることが分かる。

 今回の大きな話題は、学生部門に日本から4作品が選ばれたことだろう。このうち東京芸術大学大学院映像研究科アニメーション専攻からはキヤマミズキさんの『くじらの湯』、同じく しばたたかひろ さんの『Keep Forgetting』の2作品が入った。同校の海外映画祭での強さが今年も発揮された。
 多摩美術大学からはVaara Jariさんの『The Hunter(ワーラ ヤリ)』。Vaara Jariさんはフィンランド出身で、現在は日本を活動の拠点としている。また『Somewhere Soft』が選ばれた吉成慧恵さんは、ノルウェーのVOLDA大学でアニメーションを学んでいる。4作品のうち2つは、日本と海外のふたつの文化にまたがったものとなった。
 日本以外ではフランスのEMCA、ゴブラン、米国のCalArtsといった各国のよく知られたアニメーション・スクールの学生作品が並ぶ。学生部門は世界の若いアーティストがいま何を考えて、どんな表現手法を選んでいるかを知るよい機会にもなる。

 テレビ部門には、さすがしぎの監督の『恐竜少女ガウ子』がオフィシャルコンペティションに挙がった。怒りがマックスに達すると恐竜に変身する女の子のショートシリーズで、子ども向けで2DタッチのCGアニメになっている。作品の製作・配給にはNetflixが参加している。Netflixオリジナルアニメであることが分かる。
 テレビ部門では、昨年はHulu(日本)とトンコハウスが参加した『ピッグ 丘の上のダム・キーパー』がグランプリに輝いた。またこちらもNetflixオリジナルアニメの『B: The Beginning』もあった。2018年、19年と日本からのテレビ部門は配信向け作品からとなった。
 Netflixが参加する作品ではこの他、米国の『Big Mouth』もある。アニメーション映画祭でも配信番組が着実に認知されてはじめている。

 企業や団体などからの注文を受けて制作する受託部門には、今年は日本作品がない。しかしすでに短編部門に水江未来監督の『The Dawn of Ape』、Off-Limits部門に林俊作監督の『Leaking Life』が発表されている。合計で7作品が日本から選ばれている。
 今後期待されるのは、日本アニメが得意とする長編部門である。こちらは4月15日にパリで開催される記者会見で発表となる。

アヌシー国際アニメーション映画祭
https://www.annecy.org/festival:en/official-selection

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