積極的なM&Aを通じて事業拡大を目指す東宝が、2024年12月17日に新たなアニメーション制作会社の株式取得を発表した。2025年1月17日付で、デジタルアニメーション制作に定評のあるオレンジの発行済株式19.7%を第三者割当増資で取得する。取得金額は非公表。
オレンジは2004年に現在の代表取締役である井野元英二氏が設立した。セルタッチのCGアニメーションを得意とし、その技術力から業界で高く評価されてきた。
当初はアニメ作品全体の中のCGパートだけを担当することが多かったが、近年はCGアニメとして全体を制作する元請け作品も増えている。なかでも2017年の『宝石の国』は、従来のCGともセルタッチとも異なる独自のスタイルを生み出し評価された。その後も『BEASTARS』、『TRIGUN STAMPEDE』 といった注目作品を制作している。
東宝とオレンジはこれまでも、関係が深い。代表作の『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』 、『宝石の国』、『BEASTARS』、『TRIGUN STAMPEDE』 はいずれも、東宝の製作作品だ。また東宝最大のキャラクターであるゴジラをもとにした『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』 でも、ボンズと共同制作している。
株式取得はより深い協業関係を構築するためとしている。グループの成長戦略分野のひとつであるアニメ事業において制作機能を強化する。成長のスピードアップ、作品クオリティの向上を目指す。
東宝は近年、積極的なM&Aを通じて、短期間での新規事業の立ち上げと拡大をしている。2023年の米国の映画スタジオFIFTH SEASONへの出資、24年10月に発表された米国映画配給会社GKIDSの買収などが話題を集めた。
アニメーション制作スタジオの買収、出資もそのひとつだ。2022年にTIAを完全子会社化してTOHO animation STUDIOに社名を変更、今年になってからはサイエンスSARUを子会社化、さらに新海誠作品の制作で知られるコミックス・ウェーブ・フィルムには約6%を出資した。密な関係を今後も継続することを示したものだ。今回のオレンジへの出資もこれに近い。
アニメ業界では人材不足、スタジオ不足が常態化するなかで、各社が有力スタジオの囲い込みを進めている。そのなかで東宝が手を結ぶのは、サイエンスSARU、コミックス・ウェーブ・フィルム、オレンジと制作のレベルの高さで定評のあるスタジオばかりだ。作品の大量生産よりもハイクオリティの作品を目指すという東宝の方向性がここに現れていそうだ。