1924年にスタート、以来93年と日本で最も古い歴史を誇る映画賞「キネマ旬報ベスト・テン」の1位に、片渕須直監督の『この世界の片隅に』が選出された。『この世界の片隅に』は、第二次世界大戦前後の広島市と呉市を生きた女性・すずの日常を描いた。のどかな日常の描写と次第に広がる戦争の影の表現、そしてアニメであればこそ再現できた約70年前の風景が話題を呼んだ。
「キネマ旬報ベスト・テン」は、前年に公開された映画の中から100人以上の映画評論家ら投票により、日本映画、外国映画別にランキングとし、これを発表するユニークなかたちになっている。『この世界の片隅に』は日本映画で1位となり、2位には『シン・ゴジラ』、3位には『淵に立つ』名を連ねた。ベスト10入りしたアニメ映画は、本作だけであった。
長い歴史を誇るキネマ旬報ベスト・テンだが、アニメが1位に選ばれるのは1988年の宮崎駿監督の『となりのととろ』以来、2回目になる。実写映画にも傑作の多い年だったことも含めて快挙と言っていいだろう。
すでに『この世界の片隅に』は、第38回ヨコハマ映画祭でも作品賞に選ばれている。さらに毎日映画コンクール日本映画大賞やブルーリボン賞作品賞にもノミネートされるなど映画界を席巻している。
またキネマ旬報ベスト・テンでは、同時に発表された監督賞でも片渕須直監督が輝いた。こちらも多くの実写監督も含めた中からの決定である。
このほか外国映画ベスト・テンには『ハドソン川の奇跡』、外国映画監督賞にはその作品のクリント・イーストウッド監督が選ばれている。
また、アニメーション監督としても有名で、『シン・ゴジラ』の総監督も務めた庵野秀明が、脚本賞で受賞に輝いた。こちらもアニメ関係者には、トピックスと言っていいだろう。
2016年 第90回 キネマ旬報ベスト・テン
日本映画ベスト・10
1位 『この世界の片隅に』
2位 『シン・ゴジラ』
3位 『淵に立つ』
4位 『ディストラクション・ベイビーズ』
5位 『永い言い訳』
6位 『リップヴァンウィンクルの花嫁』
7位 『湯を沸かすほどの熱い愛』
8位 『クリーピー 偽りの隣人』
9位 『オーバー・フェンス』
10位 『怒り』