2018年のAT&Tとタイム・ワーナーの経営統合の効果が、早くもアニメーション部門にも広がっている。経営統合後、タイム・ワーナーはワーナーメディア(WarnerMedia)に名称を変更し、AT&T傘下のメディア部門の事業を取りこみ始めている。
2018年8月にワーナーメディアは、すでに旧AT&T子会社で日本アニメの動画配信プラットフォームのクランチロールを持つオッター・メディア(Otter Media)をグループに加えている。さらにこれらを含めたキッズ番組とヤングアダルト向け番組、さらに商品開発部門をひとつのユニットに統合することを明らかにした。
2019年3月4日、ワーナーメディアはワーナー・ブラザースのもとにグローバルキッズ&ヤングアダルト事業ユニットを新設したことを発表した。
ユニットには、キッズ向け専門チャンネルのカートゥーンネットワーク、ヤングアダルト向け専門チャンネルのアダルトスイム、海外向けの子どもチャンネルBoomerang(ブーメラン)といったワーナー・ブラザースの専門チャンネルが含まれる。またターナー・クラシック・ムービーズ(Turner Classic Movies)も加わる。
さらに先のオッター・メディアとワーナーメディア全体の商品開発部門も加わる。オッター・メディアはクランチロール(Crunchyroll)とアニメ・ゲーム開発のルースター・ティース(Rooster Teeth)を子会社にしている。
ひとつにまとめられた部門は、ワーナー・ブラザース社長兼CEOのケビン・ツジハラ氏が統括する。ワーナーメディアによれば、今回の事業再編は投資とコンテンツの開発をより確かなものにするためである。
キッズ・ヤングアダルト部門だけでなく、ライブエンタテーメント部門や広告部門も事業再編をする。主な目的はAT&Tとワーナーメディアにまたがるビジネスの統合とみられる。
グローバルキッズ&ヤングアダルト部門の特長は、従来の欧米のメディアに多かった「ファミリー・キッズ」のカテゴリーでなく、「キッズ&ヤングアダルト」としたことだ。ハイティーンから20代、30代を中心にした層を主要ターゲットのひとつにしていることが分かる。
さらに商品開発部門が一体になったことで、ワーナー・ブラザースを中心にキャラクター商品と共に、世界に作品を売り込んでいく流れがみられる。
こうした動きは、日本アニメにも少なからぬ影響を与えそうだ。カートゥーンネットワークは、その名前のとおりカートゥーンスタイルのアニメーション番組で日本でもお馴染みだ。そのヤングアダルト部門がスピンオフするかたちでスタートしたアダルトスイムは、これまで日本アニメを多く放送してきた。これに日本アニメ配信専門のクランチロールがつながる。
そのアダルトスイムとクランチロールは今回の組織再編のタイミングで、日本アニメで協業を発表した。アダルトスイムの日本アニメ枠の番組供給でクランチロールが協力する。クランチロールは日本アニメの配信権利を得る際に、放送権や映像ソフト、商品化権の北米ライセンスも獲得することが多い。これを活用することになりそうだ。
すでにワーナー・ブラザースの実写映画『ブレードランナー 2049』のアニメ化では、カートゥーンネットワーク、クランチロール、ルースター・ティースの協力も発表している。本作は日本のCGアニメスタジオのSOLA DIGITAL ARTSがアニメーション制作することが決まっている。ワーナー・メディアグループのアニメをハブにした取り組みが今後も増えそうだ。