旧作アニメ専門 北米で無料配信サービス「RetroCrush」スタート

配信

 配信ビジネスの競争が激化するなかで、いま広告付きで無料配信する映像プラットフォームが新たに脚光を浴びている。NetflixやAmazonプライム・ビデオとは異なる別のビジネスのチャンスがあるというわけだ。「Tubi」や「Xumo」といったプラットフォームが、有望企業としてベンチャーキャピタルや大手企業からも関心を集めている。
 そうしたなかこの分野でも、日本アニメに特化した新サービスが誕生した。2020年3月30日にサービスインした「RetroCrush」だ。「RetroCrush」は、日本の70年代から90年代の旧作アニメにフォーカスした配信チャンネルである。iTunes、Google Play、Amazon Fire TV、Rokuといった無料アプリや、同社独自のウェブ動画サイトで、全編無料で楽しめる。

 スタート当初からテレビアニメ100タイトル以上、40本以上の劇場アニメを用意した。配信番組には『銀河鉄道999』、『キャツアイ』、『魔法の天使クリミーマミ』、『わが青春のアルカディア』、『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』、『ゴルゴ13』などが含まれている。日本の有力なアニメ企業とも複数契約した結果である。

 「RetroCrush」を運営するのは、ニューヨークに拠点を持つデジタル・メディア・ライト(Digital Media Rights)である。企業設立からおよそ10年で、現在のコアビジネスは映像プラットフォーム運営とデジタル広告である。
 配信チャンネルはすでに5つ保有している。アジア番組専門の「AsianCrush」、K-POP専門の「KMTV」、ホラー・スリラー専門の「Midnight Pulp」などである。いずれもニッチであるが、熱心なファンが多くいるジャンルだ。
日本アニメもこうしたジャナルのひとつとして、「RetroCrush」が設けられた。視聴者からの課金は一切なく、ウェブ広告だけで企業収益を維持する。

 「RetroCrush」が旧作アニメに絞るのは、ニッチとは言っても現在日本アニメの配信ではクランチロールやファニメーション、Netflixといった有力企業が人気コンテンツの獲得競争を繰り広げている。人気の高い新作は権利を獲得するのは困難である。仮に獲得できたとしても、その金額は高額になる。新興の無料配信サイトのビジネスを維持するには厳しい価格だろう。
 そこで直近で米国での配信権が販売されていない旧作アニメに目をつける。日本アニメは量が多いこともあり、有名作品でも古い作品は米国展開されていないことが多い。その配信権を低額で購入するわけだ。
 作品は古くなるが、過去のヒット作であれば内容の面白さも保障される。海外での旧作に露出アップ、人気掘り起しにつながるのであれば、日本の権利者にとってもありがたい。
 しかしそうしたタイトルは、往年のファンにアピールするが、新作を追うのに熱心な若い世代に知名度は低い。今後は広い世代に、作品をどうアピール出来るかが鍵になりそうだ。

RetroCrush  https://www.retrocrush.tv/

関連記事

アーカイブ

カテゴリー

ピックアップ記事

  1. 第2回新潟国際アニメーション映画祭
     今年3月に初開催されて話題を呼んだ新潟国際アニメーション映画祭が、2024年3月に第2回を迎える。…
  2. 「アニメーションの表現」
     2023年10月23日から11月1日まで開催されている第36回東京国際映画祭は、昨年より上映本数、…
  3. 『いきものさん』© 和田淳・ニューディアー/東映アニメーション
     日本を代表するアニメーション作家として、いま“和田淳”を筆頭に挙げる人は多いだろう。2010年に『…
ページ上部へ戻る