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日本SF 作家クラブは2025年2月15日に開催された選考会にて、第45回日本SF大賞の受賞作品に市川春子のマンガ『宝石の国』を決定した。特別賞には宮西建礼の小説『銀河風帆走』を選出した。また功績賞としてマンガ家の楳図かずお、翻訳家の住谷春也、作家の山本弘の3氏に贈賞する。いずれも2024年に惜しまれつつ世を去った。
大賞受賞作には賞状とトロフィーと副賞として賞金 100 万円が、特別賞には賞状とトロフィーが贈られる。また贈賞式は2025年4月26日、代官山 蔦屋書店にて開催される「SFカーニバル」内で実施する。贈賞式の模様は日本SF作家クラブの公式YouTubeでもオンライン配信する予定だ。
市川春子は2006年の短編「虫と歌」がアフタヌーン四季賞2006年夏の四季大賞を受賞したことで漫画作家のキャリアをスタートさせた。2012年に「月刊アフタヌーン」(講談社)に連載を開始した『宝石の国』は、人間がいなくなった遠い未来に存在する無機質の宝石生命体たちの物語を描く。奇抜なアイディアと美しいビジュアル、巧みな物語が多くのファンから支持を受けて、2017年にはアニメシリーズ化もされている。2024年4月に12年に及ぶ連載が終了し、物語も完結した。
日本SF大賞は、幅広いメディアで表現されるSFを選考対象としてきた。マンガ分野からは第4回の『童夢』(大友克洋)をはじめ『バルバラ異界』(萩尾望都)なども選ばれている。マンガの大賞受賞は第42回、よしながふみの『大奥』以来、3年振りだ。
『銀河風帆走』(東京創元社)で特別賞を受賞する宮西建礼は1989年生まれ、2013年にも『銀河風帆走』第4回創元SF短編賞に輝いている。今回は同作も含む短編集を対象としている。
功績賞の楳図かずおは1950年代からマンガ家として、恐怖マンガ『へび女』、ギャグマンガ『まことちゃん』など幅広いジャンルで活躍する。『漂流教室』、『わたしは真悟』、『14歳』などはSF作品としても評価が高い。
住谷春也はルーマニアやフランスのSF、ファンタジーなどの翻訳・紹介を皮切りに、日本における東欧ヨーロッパ文化の紹介に尽力した。山本弘はゲームから小説まで幅広い創作で活躍した。『神は沈黙せず』、『アイの物語』、『去年はいい年になるだろう』などの代表作がある。